功利主義

功利主義の概要

功利主義（こうりしゅぎ、英: utilitarianism）は、影響を受ける全ての人々の幸福を最大化することを目的とした倫理学の理論です。この理論は、帰結主義に属し、行為の正当性を結果に基づいて判断します。功利主義の基本的な考え方は、効用を最大化することであり、この「効用」は幸福や快楽と関連しています。

歴史的背景

功利主義の起源は、古代ギリシャのエピクロスやアリスティッポスにさかのぼります。彼らは幸福を最高の善とみなし、その概念を現代の功利主義に結びつける哲学的土台を築きました。しかし、近代的な功利主義の体系は、ジェレミー・ベンサムの『道徳および立法の諸原理序説』に始まります。ベンサムは効用を計算することで、最善の行為を選択する方法を模索しました。さらに、彼の思想はジョン・スチュアート・ミルによって再評価され、思想の深化が図られました。

功利主義の種類

功利主義には、行為功利主義と規則功利主義、そして平均功利主義と総量功利主義など、いくつかの種類があります。行為功利主義は、特定の行為がもたらす結果に基づいて行為の善悪を判断します。一方、規則功利主義は、効用を最大化するルールに従うことに焦点を当てます。これにより、特定のケースでの幸福の最大化を狙う際に生じる矛盾を解消しようとします。

言語と訳語

「功利主義」という用語は、19世紀後半に西洋から日本や中国に伝わり、「功利」の他にも「楽利」という漢訳案が考案されました。この中で、「功利」という語は古くから存在し、特に儒教ではネガティブな意味合いを持つことも多かったですが、時代とともにその解釈も変化してきました。現代では、ネガティブな印象を避けるために新しい訳語が提案されています。

効用と幸福の測定

功利主義の中心となるのは効用の概念で、これは一般に幸福や快楽を指します。ベンサムは、快楽や苦痛の価値を計算するための「快楽計算」の方法を提案しました。これは、快楽の強度や持続時間、影響を受ける人の数などを数字で表現し、判断基準とするものです。ミルはこの考えをさらに発展させ、高次と低次の快楽を区別することで、より複雑な倫理的考察を行いました。

功利主義への批判

功利主義はその性質上、数多くの批判の対象となっています。一般的な批判として、効用を正確に測定することが不可能である点、正義を軽視する恐れがあること、特別な義務を無視することが挙げられます。また、「保安官のシナリオ」として知られる例では、個人の権利と幸福の計算が衝突する場合に、功利主義の適用がどのようになるかを問い直す必要があります。このような批判に対して、功利主義者たちは理論を修正したり、新たな解釈を提供したりして対処を試みています。

現在の応用と展望

功利主義は、社会福祉経済学や動物倫理、さらには貧困問題にの多くの倫理的問いに応用されています。特にピーター・シンガーをはじめとする現代の功利主義者たちは、効用の最大化が社会全体の利益を促進するとの視点から活動を行っています。功利主義の理論は今も進化し続け、様々な社会問題解決のためのフレームワークとして活用されています。

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