加持

加持（かじ）とは

加持とは、仏教用語の一つで、サンスクリット語の「adhiṣṭhāna（アディシュターナ）」を翻訳した言葉です。この言葉は、仏や菩薩が持つ不思議な力によって人々を守るという意味を持ち、他に「所持」や「護念」とも訳されることがあります。

加持の本来の意味

本来の加持は、仏や菩薩が不可思議な力で人々を保護する「鎮加護持（ちんかごじ）」や「神変加持（じんべんかじ）」を指します。これは、仏の慈悲の力が人々に注がれ、同時に人々の信心が仏に伝わることで、その効果を発揮すると考えられています。つまり、仏と人々の相互作用によって、加持の力が実現するとされています。

密教における加持

密教では、加持をより深く解釈しています。仏が大いなる慈悲と智慧によって人々に働きかけることを「加（加被）」といい、人々がそれを受け入れることを「持（摂持）」といいます。この加と持の双方が調和し、一致することで、仏と衆生がそれぞれ持つ「三密（身密、口密、心密）」が融合し、互いに影響を与えあうと考えられています。この状態を「三密加持」と呼び、これによって、死後の成仏をはじめとする様々な功徳が得られるとされます。

三密加持の実現

密教では、三密加持を実現するために、修行者が以下の三つの行為を実践することが重要とされます。

1. 身密: 手で仏の印を結ぶ。
2. 口密: 口で仏の真言を唱える。
3. 心密: 心を仏の境地に近づける。

これらの実践を通して、修行者は仏と一体化し、その力を得ることができるとされます。また、これらの実践に必要な呪禁の作法も加持と呼ばれます。

加持と祈祷

さらに、加持は、人々が仏（または神）の力を借りるために行う祈りの行為も指すようになります。この場合、人々自身あるいは僧侶が仲介となって祈りを捧げます。この意味での加持は、祈祷とほぼ同じ意味で用いられ、「加持祈祷」という言葉も存在します。

加持の効果

加持は、単に仏の力を借りるだけでなく、人々の内面にも変容をもたらすとされています。信心を深め、精神的な安定を得る、困難を乗り越える力を得るなど、様々な効果があると信じられています。

まとめ

加持は、仏教の中でも特に密教において重要な概念であり、仏と衆生の深い繋がりを示すものです。その意味は、仏の慈悲と人々の信仰心によってもたらされる力であり、祈りや修行を通じて実現すると考えられています。加持は、単なる外的な力だけでなく、内面の成長にもつながる重要な要素です。

参考文献

総合仏教大辞典編集委員会 編『総合佛教大辞典』法蔵館、2005年、ISBN 978-4-831-87070-4
中村元『広説佛教語大辞典』東京書籍、2001年、ISBN 978-4-487-73153-4
石田瑞麿『例文仏教語大辞典』小学館、1997年、ISBN 978-4-095-08111-3

関連項目

祈祷
* 加護

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