加斗駅

加斗駅：小浜線の小さな駅舎と、地域の生活を支える人々

福井県小浜市加斗にあるJR西日本小浜線の加斗駅は、静かな田園風景の中に佇む小さな駅です。1921年（大正10年）の小浜線延伸によって開業した加斗駅は、当初は旅客と貨物の両方を扱う一般駅として賑わいを見せていました。しかし、時代の流れとともに貨物取扱いを廃止し、1973年（昭和48年）には荷物扱いも廃止され無人駅となりました。列車交換設備も撤去され、駅舎はひっそりと静まり返るようになりました。

そんな加斗駅に、大きな変化が訪れたのは1995年（平成7年）のことです。駅舎内に理髪店が移転し、店主夫妻が駅業務の簡易委託を受け持つようになったのです。無人駅時代からボランティアとして駅舎の清掃を続けてきた店主夫妻は、切符の販売や清掃といった管理業務も担い、加斗駅に新たな活気を与えました。駅舎の旧事務室だった場所に理髪店が営業を続けることで、まるで有人駅のような賑やかさを保っていました。入口にはサインポールが設置され、地域住民にとって親しみやすい存在となっていました。

しかし、時代の流れは容赦なく加斗駅にも影響を及ぼします。店主夫妻の高齢化に伴い、理髪店は完全予約制となり、2018年（平成30年）には店主の男性が他界。現在は女性一人で営業を続けています。JR西日本金沢支社は、2030年度（令和12年度）までに委託業務を廃止し、加斗駅を完全に無人駅化することを計画しています。実施時期は未定ですが、長年地域を支えてきた理髪店と、その店主の今後の動向は、多くの地元住民にとって大きな関心事です。

加斗駅の駅舎構造はシンプルです。北側に単式ホーム1面1線を持つ地上駅で、厳密には無人駅ですが、理髪店の存在によって、簡易委託駅としての機能を一部維持しています。かつては島式ホーム1面2線で列車交換が可能な構造でしたが、駅舎側の線路が撤去され、現在の1面1線の構造となりました。使われなくなったホームの線路と砂利は撤去され、店主夫妻によってコスモスの花壇へと生まれ変わっています。この花壇は、今では加斗駅の象徴的な存在となっています。

利用状況を見ると、2019年（令和元年）度の1日平均乗車人員は62人です。近年は減少傾向にあり、過疎化が進む地域の実情を反映しています。駅周辺は田園風景が広がり、福井県道148号線が駅前を通っています。そこから北へ進むと国道27号、さらに福井県道235号線へとアクセスできます。加斗海岸も比較的近い距離にありますが、駅からのアクセスには少し時間がかかります。南へ進むと舞鶴若狭自動車道、そして若狭西部広域農道へと繋がっています。

加斗駅は、小浜線の小さな駅ですが、そこに携わる人々や、利用する人々、そして周辺の環境と深く結びついています。歴史と人々の営みが織りなす、小さな駅の物語は、これからも続いていくことでしょう。隣の駅は、東側に若狭本郷駅、西側に勢浜駅です。

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