加納宗七

加納宗七：神戸発展に貢献した幕末・明治期の商人

加納宗七（かのう そうしち、1827年7月16日-1887年5月5日）は、近代日本の発展に大きく貢献した、幕末から明治時代にかけて活躍した実業家です。和歌山市に生まれ、紀州藩御用商人の家に育ちました。酒造業や廻船業を営む家系にあって、宗七はその後、加納姓を名乗り、波乱に満ちた生涯を送ることになります。

若き日に倒幕運動に参加した宗七は、坂本龍馬暗殺事件に際しては、三浦休太郎の関与をいち早く海援隊に知らせ、陸奥宗光らとともに三浦への襲撃を試みました（天満屋事件）。襲撃は失敗に終わり、宗七は神戸に移住。そこで材木商、廻船業、舟宿業などを営みながら、新たな事業の成功へと歩を進めます。

明治維新後、宗七は明治政府の生田川付け替え工事を請け負います。わずか3ヶ月という短期間で工事を完了させ、その手腕を見せつけました。さらに、旧生田川の埋立地と堤防跡地を娘婿とともに落札し、大規模な区画整備に着手。現在の神戸の街路の原型ともいえる、幅の広い道路を建設しました。この開発によって生まれた地域の一部には、「加納町」という地名が付けられ、宗七の功績を今に伝えています。

宗七の事業への取り組みは、神戸港の発展にも大きな影響を与えました。明治6年（1873年）、神戸港が台風による甚大な被害を受けたことを受け、宗七は私財2万円を投じて生田川河口に避難港「加納港」を建設。この避難港は、神戸港の安全確保に大きく貢献しました。加納港は後に埋め立てられましたが、その跡地には国鉄神戸臨港線神戸港駅が建設されるなど、神戸の港湾発展の礎となりました。

晩年、宗七は神戸の街づくりに貢献した功績を称えられ、没後、神戸市によって銅像が建立されました。太平洋戦争中の金属供出によって一度は失われましたが、昭和56年（1981年）、東遊園地内にモニュメントとして再建され、現在もその功績を偲ぶことができます。

加納宗七は、単なる商人としてだけでなく、政治的にも活動し、近代日本の発展に貢献した重要な人物でした。彼の事業家としての才能、そして先見の明は、現在の神戸の街の姿にも色濃く反映されています。彼の生涯は、時代の変遷と個人の努力が織りなす、歴史のドラマと言えるでしょう。

参考文献

一坂太郎『ひょうご幕末維新列伝』神戸新聞総合出版センター、2008年
鳥居幸雄『神戸港1500年 ここに見る日本の港の源流』海文堂、1982年

もう一度検索