加舎白雄

加舎 白雄（かや しらお）

江戸時代中期の元文3年（1738年）に生まれ、寛政3年（1791年）に没した俳人です。本名は吉春または競、通称は五郎吉。昨鳥、春秋庵、白尾坊、露柱庵など、多くの別号を持っていました。父方の祖母の姓を用いて「平田忠次郎」と名乗った時期もあります。同時代の著名な俳人である与謝蕪村や大島蓼太らとともに、俳諧の中興を担った「中興五傑」の一人、また「天明の六俳客」の一人としてもその名が挙げられます。晩年には西行庵の系譜を継ぐ鴫立庵の庵主も務めました。

生涯

信濃国上田藩の江戸詰藩士、加舎忠兵衛吉亨の次男として、江戸深川の地で生を受けました。俳諧の道を志し、宝暦末期（1751年-1764年）に宗匠である青峨門に入門し、「舎来」と号します。その後、1765年（明和2年）には松露庵の烏明、そしてその師である白井鳥酔に師事し、研鑽を積みました。明和4年（1767年）には初めて父祖の地である信濃国を訪れ、その2年後の明和6年（1769年）には、姨捨山にある長楽寺に松尾芭蕉の句碑を建立するなど、先人の顕彰にも力を尽くしました。明和7年（1770年）に句集『おもかげ集』を刊行し、翌年には『加佐里那止（かざりなし）』を発表するなど、活発な創作・出版活動を展開しました。

しかし、安永4年（1775年）、師である鳥酔の七回忌を機に、松露門を破門されるという転機を迎えます。これを機に白雄は江戸を離れることを決意し、自身の門人を率いて諸国を行脚する旅に出ました。旅を経て、安永9年（1780年）には江戸日本橋鉄砲町に戻り、「春秋庵」を開いて独立します。この春秋庵を中心に、関東地方に一大勢力を築き上げました。建部巣兆や倉田葛三といった優れた門人を多数育成し、その門弟は4000人にも及んだと伝えられています。特に名を知られた俳人だけでも200人以上が白雄の門下から輩出されました。天明8年（1788年）には、松尾芭蕉の百回忌にあたる句会を催し、蕉風の復興を提唱する俳人としての地位を確立しました。

白雄の俳句は、技巧に頼らず、繊細かつ情趣に富む点が特徴とされます。また、生涯妻帯せず、清貧を貫いた孤高の生き様から、「日東の李清蓮」と称えられました。俳論においても功績を残しており、編著である『俳諧寂栞（はいかいさびしおり）』は、三宅嘯山の『俳諧古選』や五升庵蝶夢の『蕉門俳諧語録』に先んじて刊行されたもので、平易な言葉で俳諧の本質を説いた論として知られています。墓所は品川の海晏寺にあります。

主な著作

白雄が編纂・著した主な著作には以下のものがあります。

• - 『田毎の春』
• - 『おもかげ集』
• - 『春秋稿』
• - 『加佐里那止（かざりなし）』
• - 『俳諧寂栞（はいかいさびしおり）』
• - 『文車（ふぐるま）』

もう一度検索