加藤保男

加藤保男の登山人生

加藤保男（1949年3月6日 - 1982年12月27日）は、卓越した日本の登山家であり、その業績は今も多くの人々に語り継がれています。彼は8000メートル峰に4度、エベレストに3度登頂を達成しました。特に、エベレストをネパールとチベットの両側から登頂したのは世界で初めてのことです。さらに、エベレストを春、秋、冬の3シーズンで登頂したのも世界初の快挙となりました。埼玉県大宮市に生まれ、大宮市民栄誉賞の第一号を受賞したことで、地域の誇りとなっています。

経歴のはじまり

加藤は1967年に大東文化大学第一高等学校を卒業し、その後1971年に日本大学文理学部体育学科を卒業しました。在学中、彼は兄である登山家・加藤滝男の影響を受けて登山を始め、大学の山岳部には所属せずにJECC（ジャパン・エキスパート・クライマーズ・クラブ）のメンバーとして登攀経験を重ねました。

1969年には、兄の滝男と共にJECC隊としてアイガー北壁の夏期初直登を果たし、1972年にはグランド・ジョラスやマッターホルンと続けてアルプス山脈の三大北壁登攀を達成します。これらの試みは彼の登山キャリアにおいて重要な礎となりました。

エベレストへの挑戦

1973年、加藤は第2次RCC登山隊としてエベレストに挑戦し、ポストモンスーン期に初めて登頂しました。しかし、その際には厳しい条件下での強行軍のため、8,650メートル地点でビバークが必要となり、凍傷の影響で右手の指3本と足指を失うという苦難も経験しました。

1975年にはナンダ・デヴィ遠征に参加し、主峰に登頂。1980年にはエベレストにチベット側の北東稜から登頂し、無事に下山しました。また、1981年には尾崎隆と共にマナスルの無酸素登頂も達成します。

最後の挑戦

1982年、加藤は日本人として初の冬期エベレスト登山を目指しました。12月27日に登頂に成功しましたが、下山中に消息を絶ちました。彼は7900メートルの最終キャンプから一人でアタックし、その後再び小林利明と共に挑戦しましたが、厳しい気象条件や酸素の欠乏により生存が絶望視されました。最終的には、彼の遺体は発見されることなく、故郷の埼玉市に記念碑が建立されました。

著書と文化的影響

加藤保男はまた、登山家としての経験をもとに著書も出版しています。代表作には『雪煙をめざして』や『わがエベレスト』などがあり、これらの作品は彼の挑戦と根気を物語っています。さらに、彼の名を冠した競走「登山家 加藤保男賞」が浦和競馬場で行われるなど、彼の業績はスポーツ界にも多大な影響を与えています。

まとめ

加藤保男の生涯は、冒険と挑戦の象徴です。彼の勇気と情熱は、少なくとも多くの人々にインスピレーションを与え続けており、登山の歴史に名を刻む存在となっています。加藤の業績はこれからも語り継がれ、後世の登山家たちに多くの影響を与えることでしょう。

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