加藤孝造

加藤孝造（かとう こうぞう）は、1935年（昭和10年）に岐阜県土岐郡瑞浪町（現・瑞浪市）で生まれ、2023年（令和5年）に88歳で亡くなった陶芸家です。彼は、美濃焼の巨匠である荒川豊蔵を第一世代とする流れの中で、第三世代を代表する人物として知られています。特に「瀬戸黒」の分野では、その卓越した技術と芸術性が認められ、人間国宝に認定されました。

生い立ちと陶芸への道

加藤孝造は、製糸業を営む家庭に生まれました。瑞浪中学校を卒業後、岐阜県立多治見工業高等学校窯業科（現セラミック科）に進学し、若くしてその才能を開花させました。高校在学中には、18歳で日展洋画部に入選し、「天才」と称されました。卒業後、多治見市の岐阜県陶磁器試験場（後の岐阜県セラミックス研究所）に研究生として入所し、本格的に陶芸の道に進みました。試験場では、五代加藤幸兵衛の指導を受け、工芸の研究を深めました。

試験場勤務時代には、洋画を趣味として続ける傍ら、主任技師として志野の第四世代である玉置保夫らを指導するなど、後進の育成にも尽力しました。1960年、25歳の時に、偶然試験場を訪れた荒川豊蔵との出会いが、彼の人生を大きく変えることになります。荒川豊蔵の志野茶碗に触れたことで、陶芸家としての進むべき道が明確になったのです。17年間の試験場勤務の中で、彼は実作活動だけでなく、志野の技術指導にも力を注ぎました。

1962年には、朝日新聞社主催の現代陶芸展で三席入賞、日本伝統工芸展に初入選を果たし、1966年には同工芸会正会員となりました。1967年には朝日陶芸展で優秀賞を受賞、1968年には日本伝統工芸展で優秀賞（朝日賞）を受賞し、1969年には東海伝統工芸展で最高賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。

独立後の作陶活動

1970年、35歳で岐阜県陶磁器試験場を退職し、陶芸家として独立しました。多治見市の小さな陶房で、荒川豊蔵に師事し、本格的に作陶活動を開始しました。1971年には、独自の穴窯を築き、美濃桃山陶の研究に没頭します。1972年には、荒川豊蔵の紹介により、日本橋三越本店で初の個展を開催し、陶芸家としての地位を確立しました。この個展では、志野の作品の他、得意とする鉄釉作品や鉄釉結晶作品が多く出品されました。

1973年には、岐阜県可児市に穴窯と登窯を築き、薪窯や手回しろくろを使った伝統的な技法での作品制作に励みました。1975年には、中日国際陶芸展の評議員に就任し、毎日新聞主催の日本陶芸展にも推薦出品するなど、陶芸界での影響力を増していきます。

1983年には、美濃陶芸協会内に創設された加藤幸兵衛賞の第1回受賞者となり、1985年には日本陶磁協会賞と岐阜日々新聞社賞教育文化賞を受賞しました。1986年には、大阪のTWIN21のメインロビーに、志野陶壁「漠煌平」と織部陶壁「海潮音」を制作し、その壮大さと芸術性が高く評価されました。

作陶30年以降の活動

1990年には、大阪の松下IMPビルのロビーに陶壁「展」を制作し、天皇即位の礼を祝って志野扁壺を制作しました。同年、美濃陶芸協会会長に就任し、岐阜県文化懇話会員にも選ばれました。1991年には、多治見市無形文化財「志野・瀬戸黒」認定保持者となり、1994年には東海テレビ文化賞を受賞、1995年には岐阜県重要無形文化財「志野・瀬戸黒」認定保持者となりました。1999年には、陶房に古民家を移築し、若手育成のための「風塾」を創設しました。

2002年には、日本陶芸展に招待され、国際陶磁器フェスティバル美濃の審査員も務めました。2003年には織部賞を受賞し、2005年には地域文化功労者文部科学大臣表彰を受けました。2007年には紺綬褒章を受章し、2008年には日本橋三越本店で「作陶50年記念 加藤孝造陶展」を開催しました。

人間国宝認定と晩年

2010年には、「瀬戸黒」の重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定されました。2012年には旭日小綬章を受章し、瑞浪市、多治見市、可児市の名誉市民となりました。2015年には、とうしん美濃陶芸美術館に陶壁「連」を制作しました。晩年は、自身の作品制作に加え、荒川豊蔵の作品や美濃陶磁資料の収集に力を注ぎ、各地の美術館などに寄贈しました。

2023年4月17日、急性心不全のため88歳で逝去。彼の死後、各地で追悼展が開催され、その功績が改めて讃えられました。また、加藤孝造が生前に作陶していた窯などの寄贈が可児市に決定し、彼の精神が後世に伝えられることになりました。

加藤孝造は、その生涯を通じて美濃陶芸の発展に大きく貢献し、その作品は多くの人々に感動を与え続けています。彼の作品は、国立近代美術館、ニューヨーク・クラフト美術館、岐阜県美術館、宮内庁・赤坂迎賓館など、国内外の多くの美術館に所蔵されています。

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