加藤熈

加藤 熈（かとう ひろし）

加藤熈は、1938年2月2日に生まれ、日本の歯科医学界、特に歯周病学の発展に貢献した歯科医師、歯学者です。長年にわたり教育・研究活動に従事し、北海道大学名誉教授の称号を授与されました。また、北海道大学歯学部附属病院長を務めた経験もあります。

経歴

1962年、東京医科歯科大学歯学部を卒業。大学卒業後、母校である東京医科歯科大学で助手を務め、研究と臨床の道を歩み始めました。その後、北海道大学歯学部に移り、講師、助教授として教育・研究に携わります。さらに、東日本学園大学（現・北海道医療大学）で教授を務めた後、1986年に再び北海道大学歯学部に戻り、教授に就任しました。北海道大学歯学部附属病院長としての職務も遂行し、病院運営にも尽力しました。2001年に北海道大学を定年退官し、これまでの功績が称えられ名誉教授の称号を得ました。

研究活動と業績

加藤教授の研究活動は、歯周病の基礎から臨床応用まで多岐にわたります。特に、歯周疾患と咬合の関係、ブラキシズム（歯ぎしり・食いしばり）が歯周組織に及ぼす影響、さらにはその新しい診断方法の開発について深く探求しました。科学研究費補助金による研究代表者として、「歯周疾患と咬合異常」、「歯周病患者の早期接触と咬合性外傷の解明」、「歯周病患者におけるBruxism習癖の診査・診断と咬合性外傷の解明」、「Bruxismの新しい診断装置の開発と歯周組織破壊のメカニズムの解明」といったテーマに取り組み、これらの研究成果は多くの学術報告としてまとめられています。また、近年の研究では、歯周組織の再生医療にも着目し、「種々なるGrowth factorを応用した歯周組織再建に関する総合的研究」なども行っています。これらの研究は、歯周病治療の発展に重要な示唆を与えました。

著作

加藤教授は、精力的な研究活動に加え、多くの著作を通じて歯周病学の知識普及と後進の育成に貢献しました。単著としては、歯周病学の包括的な内容を扱った『最新歯周病学』（医歯薬出版）や、歯周病患者に対する局所矯正治療（Minor Tooth Movement）に特化した『臨床家のための 歯周病患者の局所矯正治療 Minor Tooth Movement』（医歯薬出版）などがあります。また、『除痛の臨床』や、歯科衛生士向けの教科書である『歯周療法』、『歯周治療学』（全国歯科衛生士教育協議会編）など、共著や編著も多数手掛けています。さらに、海外の主要な歯周病学の専門書である『一般臨床における Minor tooth movement』、『ランフォード＆アッシュ 歯周病の基礎と臨床』、『ラタイチャーク カラーアトラス歯周病学 第3版』などの監訳や翻訳も行い、国内外の最新の知見を日本の歯科医療界に紹介する役割も担いました。これらの著作は、大学教育から臨床現場まで広く活用され、多くの歯科医療従事者に影響を与えています。

学会活動

日本の歯科医学の発展のため、様々な学術団体において要職を歴任しました。日本歯科医学会に所属し、学術振興に貢献しました。特に、日本歯科保存学会では名誉会員であり、かつて副会長を務めました。また、日本歯周病学会の第35回秋季総会では大会長として学会運営を主導しました。さらに、日本歯内療法学会においても第18回学術大会長を務めるなど、関連分野の発展にも尽力しました。これらの活動を通じて、歯周病学のみならず、保存歯科医療全体への貢献を果たしました。

加藤熈教授の長年の教育、研究、臨床、そして学会活動は、日本の歯周病学および関連分野の進歩に多大な貢献をもたらしました。特に、歯周病と咬合・ブラキシズムの関係性の解明や、歯周組織再生に関する研究は、現代の歯周治療において重要な位置を占めています。

もう一度検索