加計正文

加計正文

加計正文（かけ まさふみ、1881年2月2日 - 1969年）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の政治家、実業家、地主であり、広島県多額納税者でもありました。広島県山県郡加計町（現在の安芸太田町）の出身で、加計銀行の頭取や加計町長を2期務めました。また、加計隅屋の22代当主でもあります。

生い立ちと学歴

加計正文は、加計八右衛門の長男として生まれました。第六高等学校一部甲類を卒業後、東京帝国大学文科に進学しましたが、家業を継ぐために中退しています。在学中は夏目漱石の講義を熱心に聴講していました。

実業家、政治家としての活動

加計正文は、加計銀行の頭取を務めたほか、加計町長を2期、郡教育会長、広島地方森林会議員、県山林会理事、県産業調査会委員など多くの公職を歴任しました。加計銀行が芸備銀行と合併した後は、芸備銀行加計支店長、山林会副会頭も務めました。さらに、三篠商事、昭和興業の取締役なども兼任し、実業界でも活躍しました。また、貴族院多額納税者議員選挙の互選資格を有していました。

夏目漱石との関係

加計正文は、夏目漱石が東京帝国大学英文科教授を務めていた時の教え子の一人であり、漱石の肉声を録音した管レコードが加計家に残っています。この録音は、漱石が自身の職業観や学生時代の冗談などを語ったもので、約1分30秒程度の音声が記録されています。録音されたレコードは劣化し、現在では音声の復元が難しいとされています。

加計正文は、漱石を慕い、手紙による交流を続けていました。漱石の小説『それから』の主人公・代助の友人の但馬町長のモデルは正文であると言われています。また、漱石が正文に宛てた手紙には、『猫の墓』に登場する墓を建てたことが書かれており、この手紙は加計家で保存されています。

鈴木三重吉との関係

加計正文は、同郷の小説家である鈴木三重吉と高等小学校以来の友人でした。三重吉の小説『山彦』は、三重吉が加計家の山荘吉水園に滞在した際に構想を練って出来上がった作品です。

家族

加計家は、加計八右衛門を初代とする旧家で、鉄山経営で財を成しました。加計正文の父・八右衛門は、鉄師、地主、加計郵便局長、加計村村会議員、加計銀行行主などを務めていました。加計正文の弟に、三千二、斎がいます。また、妻の園枝、長女の八重、息子の慎太郎、研次郎、赳がいます。孫には加計隅屋24代当主である加計正弘がいます。

人物

加計正文は、読書を趣味とし、宗教は神道でした。住所は広島県広島市上柳町と山県郡加計町にありました。

加計正文は、実業家、政治家としてだけでなく、文化人とも交流し、多方面で活躍した人物でした。

もう一度検索