加髢

加髢（カチェ）とは

加髢（かてい、カチェ、가체）は、朝鮮半島において近代以前の女性が用いたかつらの一種で、「タリ（다리）」とも呼ばれました。当時の美の基準として、大きく重い加髢が美しいとされ、社会階級や職業によって異なるデザインが見られました。特に、社会的地位の高い女性や妓生は大きな加髢を着用しましたが、庶民は短い加髢を結んで使用していました。

しかし、加髢の過度な使用は社会問題となり、1756年には英祖、1788年には正祖によって勅令でその使用が禁止されることとなりました。これは、加髢が非常に重く、着用者の健康を害する危険性があったためです。実際に、加髢の重さで頸骨を折って死亡する事故も発生していました。

19世紀に入ると、両班階級の女性は加髢の代わりに、チョンモリ（後頭部襟足に髪をまとめる既婚女性の髪型）などの髪型にチョクトゥリ（小型の帽子型冠）を着用するようになりました。しかし、王后をはじめとする宮中の女性や妓生は、特に礼装時などには加髢の使用を続けました。

加髢は、様々な装飾を含めるとその重さは平均して3～4kg程度にもなりました。

主な髪型

以下に、加髢に関連する主な髪型を紹介します。

1. チョンモリ（쪽머리）
- 加髢を使わずに、自身の髪を編んで重ね、かんざしを挿した基本的な髪型です。チョクトゥリ（족두리）という冠を被ることもあります。

2. トゥレモリ（트레머리）
- 妓生の間で流行した髪型で、自身の髪と加髢を一緒に編んだり、チョンモリの上に加髢を重ねて着用します。

3. オンズンモリ（얹은머리）
- チョンモリに編んだ加髢を巻き付けた髪型です。

4. 畳紙モリ（チョプチモリ、첩지머리）
- 宮廷の女性が礼装する際に用いる髪型で、チョンモリに畳紙という加髢が付いた装身具を髪の中央に乗せます。加髢の使用が禁止された際に推奨された髪型の一つです。

5. オヨモリ（어여머리）
- 宮廷の女性が礼装する際に、チョンモリの中央に綿入りの冠を被せた後、編んだ加髢を巻き付け、かんざしを挿して仕上げます。

6. トグジモリ（떠구지머리）
- 宮廷の女性が礼装する際に用いる髪型で、オヨモリの上にトグジという木製のかんざしを乗せます。本来は髪で作られた加髢を使っていましたが、加髢の使用禁止以降、トグジが加髢の代用品として用いられるようになりました。

7. 大首モリ（テスモリ、대수머리）
- 宮廷で王妃が礼装する際に、チョンモリの上にかつらの冠を被せた髪型です。文禄・慶長の役で翟冠が消失したため、髪で作った冠が用いられるようになりました。

このように、朝鮮時代の女性の髪型は、単なる装飾だけでなく、社会的な地位や身分、時代背景を反映するものでした。加髢の使用は禁止された時期もありましたが、その影響は後の髪型にも受け継がれ、歴史的な変遷を遂げました。

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