勅許自治都市

スコットランドの勅許自治都市：国王の特権と自治都市の繁栄

スコットランドの歴史において、勅許自治都市は重要な役割を果たしました。これは、スコットランド国王から自治権を認められた都市であり、独自の行政、司法、経済システムを有していました。本稿では、その歴史、特権、そして終焉について詳述します。

成立と発展

デイヴィッド1世の治世以前、スコットランドには現代的な意味での「都市」は存在せず、大規模な修道院や要塞の周辺に人口が集中する程度でした。しかし、12世紀に入ると、ベリックやロックスバラといった都市が設立され、その後、スターリング、ダンファームリン、パース、スクーン、エディンバラなど、多くの都市が国王の勅許によって勅許自治都市となりました。マレー地方の征服後には、エルギンやフォレスも勅許自治都市に加わりました。これらの都市は、国王からの勅許によって、様々な特権を与えられ、独自の繁栄を築いていきました。

勅許自治都市の特権

勅許自治都市には、多くの特権が与えられていました。それらは、大きく分けて以下のように分類できます。

裁判管轄権

勅許自治都市は、民事事件において独自の裁判所を有し、国王の裁判所とは独立して裁判を行うことができました。ただし、判決に不服がある場合は、国王の裁判所に上訴することができました。刑事事件については、国王の巡回裁判所で行われましたが、勅許自治都市は、12名の市民を裁判に参加させる特権を有していました。

商業特権

勅許自治都市は、市場使用料などの商業活動に関する税を課する権利を持っていました。この特権によって、都市は独自の経済活動を展開し、繁栄を築くことができました。特に外国貿易においては大きな利益を得ていました。

課税権

城砦、橋、道路などの公共施設の修繕費用を賄うための課税権も有していました。しかし、この課税を行うためには国王の許可が必要であり、実際にはあまり行使されることはありませんでした。

条例制定権

都市の発展に伴い発生する様々な問題に対処するために、独自の条例を制定する権限が与えられていました。この条例は、都市の裁判所によって強制されました。

ギルドへの特権

市場使用料などの免除や、ギルド（同業者組合）の結成を認められました。ギルドは、都市の経済活動において重要な役割を果たしました。

参事会

初期は、市民参加の合議組織がありましたが、都市の拡大と複雑化に伴い、14世紀には参事会と裁判所が分化し、より効率的な行政運営が行われるようになりました。

18世紀以降

スコットランド王国とイングランド王国の合同（1707年）時点では、70の勅許自治都市が存在していました。19世紀初頭には、腐敗選挙区の改革が行われ、1833年の勅許自治都市法によって、勅許自治都市の選挙制度が改革されました。この改革は、より民主的な市議会運営に繋がりました。1975年には、地方自治法（Local Government (Scotland) Act 1973）によって、勅許自治都市としての制度は廃止されましたが、その名称は歴史的遺産として、現在も多くの旧勅許自治都市で使用されています。

まとめ

スコットランドの勅許自治都市は、国王からの特権と自治性を背景に、独自の行政、司法、経済システムを確立し、スコットランド社会に大きな影響を与えました。その歴史は、スコットランドの都市発展の歴史を理解する上で重要な鍵となります。 それぞれの都市が独自の歴史と発展を遂げたため、より詳細な研究には各都市の個別史を紐解くことが不可欠です。

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