動物の創造

ティントレットの『動物の創造』

ルネサンス期のヴェネツィア派を代表する巨匠、ティントレット（本名：ヤコポ・ロブスティ）が1550年から1553年にかけて制作した油彩画『動物の創造』（伊: Creazione degli animali, 英: Creation of the Animals）は、旧約聖書の「創世記」に基づいて描かれた壮大な作品です。この作品は、ヴェネツィアのサンティッシマ・トリニタ同信会館のために制作された5点の連作の一つで、現在はヴェネツィアのアカデミア美術館に所蔵されています。

主題

この絵画の主題は、「創世記」における天地創造の物語に由来しています。神は5日目に水中の生物と空を飛ぶ鳥を、6日目には陸上のあらゆる生物と家畜を創造しました。さらに、神はこれらの創造物を支配する存在として、自らの姿に似せて人を創造し、人々の食物として植物を創造しました。ティントレットは、この創造の瞬間を、神の力強さと生命の躍動感を通して描き出しています。

制作経緯

サンティッシマ・トリニタ同信会館は、ドイツ騎士団によって設立され、1547年にフランチェスコ・トルビドに同信会館のアルベルゴの間（Sala dell'Albergo）を飾る絵画制作を依頼しました。その後、1550年にティントレットがこの依頼を引き継ぎ、「創世記」を題材とした5点の連作を制作しました。その連作には、『動物の創造』の他に『イヴの創造』、『父なる神の前のアダムとイヴ』、『誘惑されるアダムとイヴ』、『アベルの殺害』が含まれます。

作品

『動物の創造』では、画面中央に宙に浮かぶ神が描かれ、その周囲には神によって創造された様々な動物たちが描かれています。画面上部では、鳥たちが青空を埋め尽くすかのように飛び交い、海面には魚たちが姿を現しています。陸地には、ウサギ、ヤマアラシ、シカなどの多様な動物たちが、水辺を中心に、そして画面右端には大型動物も描かれています。さらに、幻想的な一角獣の姿も認められます。多くの動物は神が右手を伸ばす方向に移動するように描かれており、創造が単一の出来事であることを示唆しています。また、陸地には樹木も描かれており、海岸に生える細木は、宙に浮かぶ神の力に呼応するようにしなやかにたわんでいます。これらの表現を通して、ティントレットは、神の力と創造された世界の美しさを力強く表現しています。

来歴

この作品に関する最初の言及は、1584年にフィレンツェの美術評論家ラファエロ・ボルギーニによってなされました。その後、サンティッシマ・トリニタ同信会館は、17世紀のペスト流行後に、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の建設のために取り壊され、近隣に再建されました。1805年のプレスブルクの和約によってヴェネツィアがナポレオン支配下のイタリア王国に併合されると、多くの教会や同信会が廃絶されました。この時、同信会も廃絶され、ティントレットの連作は解体されて他所へ移されました。

『誘惑されるアダムとイヴ』と『アベルの殺害』は1812年に、『動物の創造』は1828年にアカデミア美術館に収蔵されました。一方、『イヴの創造』は盗難または紛失によって現存せず、『父なる神の前のアダムとイヴ』は断片のみがウフィツィ美術館に現存しています。

ギャラリー

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脚注

この作品は、その独特の構図と色彩、そして劇的な表現で、見る者を圧倒します。ティントレットの才能が遺憾なく発揮された傑作であり、ルネサンス美術の重要な一例として高く評価されています。

参考文献

『イタリア・ルネサンス 都市と宮廷の文化展』アントーニオ・バオルッチ、高梨光正、日本経済新聞社（2001年）

外部リンク

アカデミア美術館公式サイト, ティントレット『動物たちの創造』

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