動的言語ランタイム

動的言語ランタイム（DLR）とは

動的言語ランタイム（Dynamic Language Runtime、DLR）は、マイクロソフトが開発した、共通言語ランタイム（CLR）上で動作する技術です。この技術は、PythonやRubyのような動的言語を.NET Framework上で効率的に実行するための基盤を提供します。

DLRは、以下のような主要な機能を提供します。

動的型システム: 変数の型が実行時に決定される動的型付けをサポートします。
動的メソッドディスパッチ: メソッドの呼び出しを、実行時にオブジェクトの型に基づいて解決します。
動的コード生成: 実行時にコードを生成し、パフォーマンスを向上させます。
ホスティングAPI: C#やVB.NETなどの静的型付け言語との相互運用を可能にします。

これらの機能により、DLRは、IronPython、IronRuby、動的Visual Basic .NETなどの動的言語の実装をサポートし、異なる言語間での相互作用を容易にします。

DLRの歴史

DLRプロジェクトは、2007年のMIXカンファレンスでマイクロソフトによって発表されました。

2008年11月: .NET DLR 0.9ベータ版がリリースされました。
2008年12月: DLR 0.9の最終版がリリースされました。
2010年4月: DLR 1.0がリリースされ、.NET Frameworkに組み込まれました。
2010年7月: DLRのライセンスがMicrosoft Public LicenseからApache License v2.0に変更されました。

また、CodePlexでは、DLRのオープンソースプロジェクトも存在していましたが、2010年以降、活動は停止しています。

サポートされる言語

DLRは、主に以下の言語で使用されています。

IronRuby: Ruby言語の.NET実装
IronPython: Python言語の.NET実装
* PowerShell 3.0: Windows 8でリリースされたバージョンからDLRを使用するようにアップデートされました。

かつては、Visual Basic 2010およびマネージJScriptでもDLRを使用する計画がありましたが、マネージJScriptについては、実装プランが発表されていません。また、IronSchemeというSchemeの実装もDLR上に構築される計画がありましたが、DLRのバージョンがSchemeの要件を満たさなかったため、この計画は中止されています。

アーキテクチャ

DLRのアーキテクチャは、言語から独立した抽象構文木（AST）を中心に構築されています。各ノードは、動的言語で共通する機能を表現しており、これらのノードは、汎用のスタック上に実装された基本的な言語構造です。DLRは、これらのノードで表現されたコードを動的に生成します。

DLR上で実装される動的言語のコンパイラは、DLRの抽象構文木を生成し、それをDLRのライブラリに引き渡します。DLRは、DynamicSiteオブジェクトを使用して、メソッドをオブジェクトにバインドし、動的に更新される情報を管理します。DynamicSiteオブジェクトは、オブジェクトとメソッドの状態をキャッシュし、オブジェクトが変更された場合はキャッシュも更新されます。これにより、動的言語の実行中にメソッド呼び出しのパフォーマンスを向上させることができます。

他の技術との比較

Java仮想マシンに動的プログラミング言語のサポートを追加しようとするDa Vinci Machineなどの試みとは対照的に、DLRは既存の共通言語ランタイムと.NET Framework仮想マシン上に構築されています。

まとめ

動的言語ランタイム（DLR）は、動的言語を.NET Framework上で効率的に実行するための重要な技術であり、動的型付け、動的メソッドディスパッチ、動的コード生成などの機能を提供します。これにより、異なる言語間の相互運用性が向上し、開発者はより柔軟にシステムを構築できます。DLRは、IronPython、IronRubyなどの多くの動的言語の実装基盤として広く利用されています。

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