動詞句

動詞句とは

動詞句（どうしく、英：verb phrase または verbal phrase、略して VP）は、言語学における統語論的な単位であり、1つ以上の動詞を含んで構成されています。この用語には、さまざまな理論に基づく異なる解釈がありますが、全般的には動詞という中心的な要素が重要です。ただし、動詞句は句動詞（phrasal verb）とは異なる概念です。

動詞句の種類

動詞句は、主に定型動詞句（finite verb phrase）と非定型動詞句（non-finite verb phrase）の2つに分けることができます。理論によっては、両者を区別しない立場と、非定型動詞のみを重視する立場があります。例えば、句構造文法では両者を同等に扱いますが、依存文法では定型動詞を主要部とする動詞句の存在を認めていません。

句構造文法における動詞句

句構造文法の観点から見ると、動詞句は動詞や助動詞を主要部として形成される句です。単独の動詞すら動詞句として定義される場合があり、定型および非定型動詞句の両方が構成要素として認識されています。動詞句の中には、指定部、補部、そして付加部が含まれることがあります。ここでの補部は、主要部動詞が要求する要素であり、内部に位置づけられます。付加部は、その要素がなくても文が成り立つ修飾語句になります。

例を挙げると、"Yankee batters hit the ball to win their first World Series since 2000" の動詞句は、"hit the ball to win their first World Series since 2000"です。他の例では、"Mary saw the man through the window" では、"saw the man" および "through the window"がそれぞれ補部と付加部を構成しています。

依存文法における動詞句

依存文法では、非定型動詞から成る動詞句は構成要素として扱われますが、定型動詞を主要部とする構成要素の存在を否定します。ここでは、句構造文法による解析とは異なり、文全体が主語に対する動詞句として二分され、主語が従属部と見なされることもあります。このため、定型動詞句は成り立たないとされています。例えば、"John has finished the work" という文においては、全体が名詞句と非定型動詞句から成るとされていますが、定型動詞句は考慮されません。

さらに、依存文法においては構成素テストが重要な役割を果たします。これは、特定の語の組み合わせが構成素として機能するかを検証するためのテストです。非定型動詞句はプロトタイプとして成功することが示唆されていますが、定型動詞句はうまく機能しないことが指摘されています。

狭義の動詞句

動詞句を「動詞的要素のみ」として見る見解も存在します。この観点からは、動詞句は主動詞、助動詞、不定詞、分詞から成り立ち、目的語やその修飾語は含まれません。この定義は、機能主義理論や欧州の伝統的文法書で取り入れられている一方で、句構造文法とは相入れないことにも留意が必要です。

狭義の動詞句の例としては、"John has given Mary a book" や "She kept screaming like a maniac" などがあります。これらは動詞的要素だけで構成されています。

このように、動詞句に関する理解はそれぞれ異なる理論や定義によって多様性がありますが、いずれも言語構造を理解する上で重要な役割を果たしています。

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