勘合

勘合とは

勘合（かんごう）とは、中世の日明貿易において、明王朝が発行した割符であり、正式な貿易船であることを証明する重要な役割を果たしました。この制度は、明と朝貢国との関係を明確にし、公的な貿易と私的な貿易を区別するために設けられました。

勘合の起源と意味

勘合という言葉は、元来「二つのものを考え合わせる」という意味を持ちます。そこから転じて、二つの札を突き合わせて真正を証明する証書を指すようになりました。古代には「符」と呼ばれていたものが、唐宋以降は「勘合」という名称が用いられるようになりました。中国王朝では、六部が発行権限を持ち、官吏の赴任、使者の派遣、軍隊の動員、財物の収支、人員の徴発など、多岐にわたる目的で使用されました。

明の勘合

明王朝は、洪武16年（1383年）にシャムやチャンパへの付与を皮切りに、東アジアの約50か国に勘合を与えました。これは、中華思想に基づき、明を中心とした国際秩序を確立しようとする意図によるものです。勘合の主な目的は、朝貢国と明との国家関係を明確化し、公船と私船を区別することでした。

勘合の種類と形態

多くの国には紙製の勘合が与えられましたが、全ての国が同じではありませんでした。例えば、チベット系の西蕃には銅製の金牌信符が、ラオスやミャンマー方面の国々には金牌信符と勘合が併用されました。また、朝鮮や琉球は、国王の忠義を評価されて勘合を免除され、国王の表文をもって朝貢を許されました。

日明貿易と勘合

当時の民間貿易は、倭寇に代表されるような無法な貿易であり、明王朝を悩ませる要因となっていました。そこで、明は日本（室町幕府）に倭寇の取り締まりを求めるとともに、公的な貿易を推進することで、貿易の利益を幕府側に取り込もうとしました。これにより、勘合を用いた貿易が始まりました。日本では、応永11年（1404年）に、明の永楽帝から足利義満に「日本国王之印」のある永楽勘合が送られたのが最初です。

勘合の運用

日明間では、明が発行する「日字勘合」と、日本側が発行する「本字勘合」の二種類が存在しました。それぞれ100枚ずつが発行され、勘合には番号が振られていました。また、勘合の底簿も存在し、明の礼部と日本の室町幕府、そして寧波の浙江布政司がそれぞれ保管しました。遣明船は、本字勘合を持参し、浙江布政司で底簿と照合し、さらに北京の礼部でも照合を受けました。逆に、明からの船は、日字勘合を日本に持参し、日本の底簿と照合しました。この照合により、正規の貿易船であることが確認されました。

勘合の発行と回収

皇帝の代替わりごとに新しい勘合が発行されるのが原則でしたが、日明間では永楽、宣徳、景泰、成化、弘治、正徳の勘合が確認されています。新しい勘合が発行される際には、古い勘合や底簿は全て明の礼部に返却されることになっていました。

勘合の実例

現存する勘合の実物はありませんが、禅僧の天与清啓が明への渡航を記録した『戊子入明記』に「本字壱号」の勘合の例図が描かれています。これは、朱墨の半印と筆記の漢数字が記載された縦長の紙で、裏面には献上物や乗船者数などが記されていました。

「勘合符」という呼称について

「勘合符」という呼称は、江戸時代以降に用いられるようになった俗称です。日明貿易が行われていた時代には、「勘合」が正式な名称でした。このことは、当時の日本側の史料からも確認できます。「勘合符」という名称は、勘合を他の割符と区別するために「勘合の符」などと呼称されていたものが省略されたものと考えられています。

まとめ

勘合は、日明貿易において、国家間の外交と貿易を円滑に進めるための重要なツールでした。勘合制度は、明王朝の国際秩序構想を反映し、その後の東アジアの国際関係に大きな影響を与えました。現代では、この制度を通じて当時の貿易や外交のあり方を深く理解することができます。

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