勝国寺 (世田谷区)

勝国寺の紹介

勝国寺（しょうこくじ）は、東京都世田谷区に聳える新義真言宗の寺院です。この寺院の位置は、世田谷城の裏鬼門であり、鬼門を祓うために薬師如来が祀られたことが寺院設立の背景とされています。また、勝国寺は玉川八十八ヶ所霊場の48番札所としても知られています。

歴史の歩み

勝国寺の起源は「丸香山薬師院」として知られており、後に「青龍山勝国寺」と称されるようになりました。新義真言宗の豊山派に属し、宝仙寺の末寺として存在していました。残念ながら、第二次世界大戦中の空襲によって多くの古文書が消失したため、創建年代や具体的な事情は不明です。ただし、文献『新編武蔵風土記稿』によると、開山についての記録があり、吉良義髙の祈願所であったとも言われています。初期の歴史はあまり明確でありませんが、1554年（天文23年）まで遡ることができるとされています。

寺の設立には2360人の人手がかかり、完成には約3年を要しました。吉良家がその宗教的な拠り所としていたため、特に薬師如来が本尊として重要視されていました。

勝国寺の位置は、世田谷城の防衛の観点からも特異なものです。その北と西は崖で囲まれており、この地形が寺院の防衛に寄与したことでしょう。勝国寺は防衛の目的を持った砦ともいえる存在であり、周囲の寺院と共に城を守る役割を果たしていました。

近世の動きと災害

吉良氏の力が弱まった後、徳川家康やその後の家族が勝国寺に対して土地寄進を行います。これにより、寺の地位は強化され、1634年から1649年の間も継続的に寄進がありました。しかし、江戸時代を通じて勝国寺は火災に見舞われ、1793年には本堂が焼失しましたが、翌年には再建されました。また、昭和20年の空襲によって再度多くの堂宇が焼失してしまいました。

この時に焼け残った薬師如来像の胎内からは1592年の古文書が発見され、寺院の歴史的重要な資料とされています。

境内の特色

現在の勝国寺の境内には、1945年の空襲を耐え抜いた表門と白山堂のみが残っています。表門を通ると、正面に本堂があり、東に庫裡、そして左手に白山堂、奥には薬師堂があります。表門は幕末期に建てられたとされ、一部の建築物は1979年から1982年にかけて行われた調査の中で古建築として価値が評価されています。

本堂の背後には墓地があり、土屋蕭海の墓もここに埋葬されていることから、歴史的なつながりを感じさせます。

文化財の保護

勝国寺にはいくつかの重要文化財があります。特に世田谷区指定の「薬師如来立像」は、室町時代の作品とされ、1592年の文書が発見されたことからもその歴史的価値が高いとされています。この像は年に一度のみ初薬師の際に一般公開され、人々の信仰を集めています。

さらに、日光菩薩立像が脇侍として知られ、こちらも指定文化財に追加されました。その他に不動明王立像や地蔵立像、涅槃図も存在し、それぞれが江戸時代のものとして重要視されています。

アクセス

勝国寺へのアクセスは、東急世田谷線の世田谷駅から徒歩約3分と便利です。訪れる際には、この歴史ある寺院の空気を存分に感じ、古き良き世田谷の文化に触れてみてください。

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