世田谷城

世田谷城（せたがやじょう）

世田谷城は、かつて武蔵国荏原郡世田谷にあった日本の平城であり、現東京都世田谷区の豪徳寺付近に位置していました。吉良氏が築いたこの城は、同氏が奥州からこの地に拠点を移し、世代を超えて利用されたもので、歴史的にも重要な役割を果たしました。

概要

世田谷城は、吉良氏によって築城された平城で、その設計や構造は、自然環境を巧みに利用したものでした。この城は、吉良氏が本拠とする地点として重要な意味をもつため、その歴史も奥深いものとなっています。

歴史・沿革

世田谷城の歴史は、貞治5年（1366年）に遡ります。この年、吉良治家がこの地を拝領し、以後世代を経て居館として整備されることになりました。特に応永年間（1394年 - 1426年）頃には、居館の整備が行われたとされています。その後、吉良成高の時代には、さらに城郭としての修築が施されたと考えられています。

天正18年（1590年）、豊臣氏による小田原征伐により、世田谷城は接収されました。この結果、吉良氏は当時の拠点を失い、城は廃城となりました。その後、江戸城の改修工事において、世田谷城の石材が利用されたとの記録も残っています。

構造

現代の世田谷城の痕跡は、経堂台地から南へ突き出る舌状の台地に位置しています。この城域は、周囲を烏山川が流れており、天然の堀として機能していたことが、攻防戦において重要な要素であったことは間違いありません。公園化された世田谷城阯公園には、本丸があったと推測されており、その近辺まで城域が広がっていたとされています。

遺構

世田谷城阯公園内には、北に延びる空堀や土塁が現在も残っています。これらの遺構は、整備の際に一部変更が行われたものの、歴史的価値が認められた場所として重要視されています。特に豪徳寺の参道周辺には、土塁の痕跡も見られ、歴史を感じさせる情景が広がっています。ただし、一部の遺構は立ち入りが制限されているため、注意が必要です。

支城

世田谷城には奥沢城という出城が存在し、これにより周辺地域の防衛機能が強化されていました。これらの城郭は、戦国時代の激動の中で重要な役割を果たしていました。

後史

江戸時代に入ると、世田谷には代官屋敷が設けられ、行政の拠点として機能しました。この代官屋敷は、現在の東急世田谷線「上町駅」近くの東南方向約200mに位置していました。

脚注・参考文献

• - 八巻孝夫「世田谷城」（村田修三編著『図説中世城郭事典』第一巻、新人物往来社、1987年）
• - 三田義春・東京都世田谷区教育委員会編『世田谷の中世城塞』
• - 伊禮正雄「城南の中世城館址 その3」（大田区史編纂委員会編『史誌』5号）

世田谷城は、その歴史、構造、そして遺構から多くを語りかけてくる文化遺産であり、地域の歴史を学ぶ上でも欠かせない存在です。

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