勝木司馬之助

勝木司馬之助（かつき しばのすけ）

勝木司馬之助は、1907年6月30日に福岡県で生まれ、1993年4月20日に亡くなった日本の医師、医学者です。熊本大学、九州大学、宮崎医科大学（現・宮崎大学医学部）で教授や初代学長を歴任し、特に脳血管障害の疫学研究、公害病研究で多大な功績を残しました。

生涯

勝木は、1907年、福岡県鞍手郡宮田町で地主の長男として生まれました。旧制福岡県立鞍手中学校、旧制福岡高等学校を経て、1930年に九州帝国大学医学部を卒業。武谷広教授の内科に入局しました。

1935年には「神経病性関節症に関する臨床的並びに実験的研究」で医学博士号を取得。1936年から1937年にかけてはドイツに留学し、ゲッティンゲン大学とロストック大学で内科学と内分泌学を学びました。帰国後、1941年に九州帝国大学助教授に就任。その後、1948年に国立筑紫病院厚生技官、1950年に熊本大学教授、1956年に熊本大学付属病院長を経て、1956年12月に九州大学教授となりました。

1960年には第1回日本臨床神経学会会長、1963年には三池災害一酸化炭素中毒患者医療委員会委員長、1968年には九州大学医学部付属病院長、同年、カネミ油症事件研究班班長などを歴任。1970年には第67回日本内科学会会頭を務めました。1971年に九州大学を定年退官し、名誉教授の称号を受けました。

退官後も、1971年には公立学校共済組合九州中央病院長、1974年には宮崎医科大学の初代学長に就任。1981年に同大学長を退任しました。1981年には第12回世界神経学学会会長も務め、国際的にも活躍しました。

久山町研究

勝木の最も重要な業績の一つが、福岡県糟屋郡久山町で行われた脳血管障害の疫学研究、通称「久山町研究」です。この研究は、1961年から開始され、40歳以上の住民を対象に循環器検診を実施し、死亡者の解剖を徹底することで、脳血管障害の実態を詳細に把握しました。その結果、脳出血よりも脳梗塞が約4倍も多いことを明らかにし、日本の脳血管障害の疫学研究に大きな影響を与えました。この研究は、1962年から1969年まで、米国のミネソタ大学との共同研究としても行われました。

公害病研究

勝木は、公害病研究にも力を注ぎました。熊本大学時代には水俣病の発症時に患者の診察にあたり、研究の先鞭をつけました。また、九州大学時代には三池炭鉱爆発事故で発生した急性一酸化炭素中毒患者の対策にあたり、九州大学病院長時代にはカネミ油症の研究班を組織し、その原因究明と対策に取り組みました。これらの公害病研究は、社会的な問題解決に貢献しました。

受賞歴

勝木の業績は高く評価され、数々の賞を受賞しています。
1968年: 西日本文化賞（熊本大学水俣病研究班に対して）
1975年: 武田医学賞（脳卒中の疫学的研究に対して）
1978年: 勲二等旭日重光章

著書・論文

勝木は、研究成果をまとめた多くの著書や論文を発表しました。
著書: 『最新内科処方』(1947年)、『内分泌の中枢調節』(1965年)
随筆: 『風と水と』(1968年)、『流れる』(1978年)
主要論文: Katsuki S: Nihon Naika Gakkai Zasshi. 1969 Dec 31;58(13):13-5.[Epidemiological study of the inhabitants of Hisayamacho].

関連人物

勝木の長男である勝木元也も、分子生物学者として著名であり、九州大学や東京大学で教授を務めました。

勝木司馬之助は、医学研究と社会貢献の両面で大きな足跡を残した偉大な医学者でした。その業績は、今日の医療にも深く影響を与えています。

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