勝田車両センター

JR東日本水戸支社の管轄下にある勝田車両センターは、茨城県ひたちなか市に設けられた大規模な車両基地です。常磐線勝田駅の北側に隣接しており、JR東日本首都圏エリアの鉄道輸送、特に常磐線や水戸線において重要な役割を果たしています。

この車両基地は、所属車両の機能維持、日常的な点検（仕業検査）、必要に応じた検査（臨時検査）、そして故障時の修理や改造といった多様な業務を担っています。ただし、より大がかりな車両の解体検査や総合的な検査（要部検査や全般検査）は、遠く離れた福島県の郡山総合車両センターにて行われ、その際には水戸線や東北本線を経由して車両が回送されます。

勝田車両センターの歴史は古く、1961年（昭和36年）6月に日本国有鉄道の勝田電車区としてその歩みを始めました。開設当初は44両を収容可能な施設規模を持ち、建設には約3億1,800万円の費用が投じられました。用地取得費、線路基盤、橋梁、軌道、運転設備、建物など、鉄道車両基地としての基本機能を整備するための様々な費用が含まれています。

開設当初には401系電車が配置され、常磐線の電化区間で営業運転を開始しました。その後、急行形や特急形など、時代の要請に応じた様々な形式の電車が配備されていきました。1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化によりJR東日本に継承され、2004年（平成16年）4月1日には現在の勝田車両センターという名称に改称されました。その後も品質管理の国際規格であるISO 9001認証を取得するなど、組織としての質を高めています。2015年（平成27年）の上野東京ライン開業は、当センター所属車両の運用範囲を品川方面まで拡大させる重要な出来事でした。

組織としては、本所の他にいくつかの派出所が設けられています。土浦市には土浦派出所（2023年3月に土浦運輸区検修部門から移管）、水戸市には水戸派出所（2024年10月に水戸統括センター検修部門などから移管）、久慈郡大子町には大子派出所（2024年10月に水郡線統括センター検修部門から移管）、そして福島県いわき市にはいわき派出所が置かれ、それぞれ担当エリアや役割に応じた業務を行っています。特に、大子派出所は水郡線で使用される気動車（キハE130系）の管理を担い、水戸派出所も最近の組織変更で水郡線の気動車業務の一部を受け持つことになりました。

構内には、車両を収容するための多数の線路が敷設されています。常磐線下り線側から順に、車両留置線（13線、一部に洗浄設備あり）、検査線（3線、検修庫があり日常点検を実施）、修繕線（2線、修繕庫やクレーンを備え機器交換などを実施）、事業用車留置線（1線、検測車両などが使用）などが配置されています。車両が基地に出入りする入出区線には、自動で車両を洗浄する機械も設置されています。かつて構内にあった車輪転削機は、2006年に新設された内原電留線に移設され、より効率的なメンテナンス体制が構築されています。

現在（2023年9月1日時点）は、特急「ひたち」「ときわ」として活躍するE657系が最も多く配置されています。かつて「フレッシュひたち」で運用され、一時新潟へ転出したものの、近年再び当センターに戻り臨時・団体列車などで運用されているE653系も少数配置されています。常磐線の土浦以北や水戸線で主に活躍するE501系や、広範囲で普通・特別快速列車に使用され、2階建てグリーン車を連結するE531系（0番台・3000番台）も多数を占めています。また、線路や架線などの検測を行う事業用車両であるE491系（愛称：East i-E）も配置されています。これらの電車に加え、線路のバラスト輸送に使用されるホキ800形貨車も配置されていますが、近年廃車が進み配置両数は減少しています。

過去には、特急「スーパーひたち」「フレッシュひたち」を代表する存在だった651系や、国鉄時代から活躍した485系（「リゾートエクスプレスゆう」含む）、そして常磐線・水戸線の主力として長きにわたり運用された401系、403系、415系（普通鋼製・ステンレス）などが配置されていました。これらの車両の多くは後継車両への置き換えや車両の老朽化に伴い、引退または他区所への転属となり、当センターからは姿を消しました。中には廃車後に保存された車両もあります。また、試験用車両や牽引車、検測車など、特殊な用途で使用された車両も時代に応じて配置されていました。電気機関車のED75形やEF80形、レール輸送用のチキ5200形貨車なども、かつては当センターに関わりのある車両として存在しました。

勝田車両センターは、その長い歴史の中で配置車両や組織形態を変えながらも、常に常磐線を中心とした地域の鉄道輸送を技術面から支え続けている重要な拠点です。

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