勢州軍記

勢州軍記：伊勢国の戦国時代を克明に描く軍記物

『勢州軍記』（せいしゅうぐんき）は、戦国時代の伊勢国（現在の三重県）を舞台とした軍記物であり、歴史書としての側面も持ち合わせています。神戸良政によって著され、寛永年間に完成、寛永12年から13年（1635年-1636年）頃に成立しました。全2巻12節から構成されています。

成立の背景と著者

著者の神戸良政は、伊勢北部の豪族であった神戸具盛の末子・高島政光の孫にあたります。父である神戸政房は蒲生氏郷の家臣であり、良政は父の記録を基に、松坂に戻ってから地元の人々への聞き取り調査を行い、本書をまとめ上げました。

内容の特徴と史料的価値

『勢州軍記』は軍記物という形式をとっているため、多少の誇張表現は含まれていると考えられます。しかし、全体としては客観的な立場で記述されており、通常の軍記物と比較して史料的価値が高いと評価されています。伊勢地方の豪族や武将たちの動向、合戦の様子などが詳細に記録されており、当時の社会情勢や文化を知る上で貴重な資料となっています。

勢州兵乱記

寛永15年（1638年）には、『勢州軍記』の抄録である『勢州兵乱記』が紀州藩主（徳川頼宣）に献上されました。この抄録版もまた、伊勢地方の歴史を研究する上で重要な資料として扱われています。

収録状況

『勢州軍記』は、『続群書類従』の合戦部に収録されています。また、『勢州兵乱記』は、『（改定）史籍集覧』25に収録されています。

参考文献

近藤瓶城 編「勢州兵乱記」『史籍集覧』 25巻（再）、近藤出版部、1907年、585–601頁
平松令三「勢州軍記」『国史大辞典』吉川弘文館、1997年

外部リンク

* 『勢州軍記』現代語訳

『勢州軍記』は、戦国時代の伊勢国における政治、経済、社会、文化など、多岐にわたる側面を理解するための重要な手がかりとなります。地域の歴史に関心を持つ人々にとって、必読の書と言えるでしょう。

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