勢見山古墳

勢見山古墳：古代のロマンと伝承が息づく地

徳島県徳島市二軒屋町と勢見町にまたがる勢見山に、ひっそりと佇む勢見山古墳。地元では「ササキの抜け穴」という名で親しまれています。この古墳は、4世紀後半に築造されたとされる前方後円墳であり、古代の歴史を今に伝える貴重な史跡です。

古墳の概要

勢見山古墳は、眉山の一部をなす勢見山の山頂に位置しています。古墳の形状は前方後円墳とされていますが、現在は円墳状の高まりのみが残っています。しかし、東側に開口した竪穴式石室からは、内部を観察することが可能です。石室の内部を覗き込むと、古代の息吹を感じることができるでしょう。

1766年（明和3年）には、この古墳から筒形銅器と銅鏡が出土したという記録が残っています。特に筒形銅器は、徳島県内では勢見山古墳が初の出土例として知られています。これらの出土品は、当時の人々の生活や文化を知る上で重要な手がかりとなります。

天武天皇中宮摩耶姫との伝承

勢見山古墳には、天武天皇の中宮であった摩耶姫にまつわる悲しい伝承が残されています。かつてこの地には奥津城があったと伝えられており、摩耶姫が祀られていたと云われています。現在、墳頂部には「天武天皇中宮摩耶姫命之墓」という石碑が建てられています。

伝承によれば、摩耶姫は懐妊中に壬申の乱で阿波国の「いわねびこ」という者に連れ出された際に悶死し、この地に奥津城が築かれて葬られたとされています。この伝承は、古代の権力争いや悲劇を物語るものであり、訪れる人々に深い感銘を与えます。

ササキの抜け穴という別称

勢見山古墳は、「佐々木の抜け穴」や「鷦鷯の抜け穴」とも呼ばれています。この別称には、様々な説があります。

一説には、鎌倉時代の武将である佐々木高綱が、有事に備えてこの地に抜け穴を掘ったとされています。その穴は海まで通じているとも言われていますが、真偽は定かではありません。

また、忌部神社の伝承では、仁徳天皇の殯宮（仮埋葬墓）であったとされています。仁徳天皇が民の竈の煙の勢いを観察するための物見櫓を設置していた場所であり、天皇が崩御した際にここが殯宮の地に選定されたと云われています。数年後に本陵が完成したため改葬されたので、「鷦鷯の抜け穴」と呼ばれるようになったとも伝えられています。

周辺情報

勢見山古墳の周辺には、勢見山や忌部神社など、歴史や自然に触れることができるスポットが点在しています。古墳を訪れた際には、これらのスポットにも足を運び、地域の魅力を満喫してみてはいかがでしょうか。

勢見山：古墳のある山。
忌部神社：阿波国を拓いたとされる忌部氏ゆかりの神社。

勢見山古墳は、古代の歴史と伝承が息づく場所です。ぜひ一度訪れて、その魅力を体感してみてください。

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