包帯をしてパイプをくわえた自画像

フィンセント・ファン・ゴッホの「包帯をしてパイプをくわえた自画像」（Self-Portrait with Bandaged Ear and Pipe）は、1889年1月に描かれた油彩の作品です。この作品は、ゴッホがアルルに滞在していた時期に起こった、いわゆる「耳切り事件」の直後に描かれたと考えられています。

絵の中のゴッホは、包帯で耳を覆い、パイプをくわえた姿で描かれており、痛々しい彼の状況を物語っています。この作品は、スタブロス・ニアルコス・コレクションの一部とされていますが、2016年時点ではチューリヒ美術館に貸し出されており、一般の鑑賞者が目にすることができます。

この作品とよく似た構図で、パイプを持っていない「包帯をした自画像」（Self-Portrait with Bandaged Ear）という作品も存在します。こちらの作品では、背景に浮世絵のようなものが描かれている点が特徴的です。この作品もまた、「耳を切った自画像」と称されることがあります。現在、この作品はロンドンのコートールド・ギャラリーに所蔵されています。

これらの自画像は、ゴッホの精神状態が不安定であった時期に描かれたものであり、彼の内面を深く理解する上で重要な作品と言えるでしょう。特に、包帯を巻いた痛々しい姿は、ゴッホの苦悩を直接的に表現しており、見る者に強烈な印象を与えます。また、同じ構図でありながら、パイプの有無や背景の違いが、それぞれの作品に異なるニュアンスを与えている点も注目に値します。これらの作品は、ゴッホの芸術と生涯を研究する上で、欠かせない資料となっています。

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