北の三人

映画『北の三人』について

『北の三人』は、1945年に公開された日本の戦争映画で、戦時下の女性たちの活躍を描いています。制作は東宝で、映画はモノクロで72分の長さです。この作品は日本の航空基地で通信を担当する3人の女性通信士たちの勇敢な姿を中心に展開されます。1945年8月5日に封切られ、8月15日の敗戦時には国内で唯一上映されていた劇映画として、戦争の終息を迎える直前の特別な位置付けを持っています。

映画は、戦意を高めるためのプロパガンダ作品でもあり、さらに女性の軍事参加を前向きに描いた点が当時の日本映画としては異色です。池川玲子氏はこの作品を「極めてフェミニズム色の濃い映画」と評しています。特に、通信士として奮闘する女性たちの姿は、彼女たちの社会進出を象徴するものとして、時代を超えて多くの人々に影響を与える作品となっています。

ストーリー概要

物語は青森飛行場から始まります。ここに、緊急のモールス符号通信が入ります。この通信は、択捉島の北海飛行場へ向かっている輸送機60号からのもので、機体に異常が発生し、緊急着陸の許可を求めているものでした。若き女性通信士である上野すみ子は、自らの機知に富んだ行動で輸送機を安全に着陸させます。すみ子は、病気で倒れた男性通信士の代わりとして、ほぼ一人で飛行場の管理業務を担当していました。

この輸送機には、東京から千島飛行場へ転任する松本よしえも搭乗しています。よしえの兄カズオは、すみ子の婚約者でしたが、カズオはビルマ戦線で死亡しています。二人は悲しみを共にしながら、カズオの意志を継いで国のために奉仕する決意を新たにします。

その翌日、輸送機は出発しなければならないのですが、視界が悪い霧に覆われています。操縦士は地上の通信士からの指示を頼りに、盲目的に飛行することを決断します。通信士の交代や、他の女性たちの協力により、輸送機は無事に北海飛行場に到着します。

しかし、北海飛行場では敵機の襲撃があり、あき子という女性通信士が瓦礫に襲われてしまいますが、彼女は持ちこたえ、最終的に輸送機に無事の連絡を送ります。

この一連の出来事を通じて、仲間たちの絆や女性たちの勇気が描かれ、映画の最後には「君たちは女子の道を一歩前進させた」と称賛される場面が感動的です。恋愛、友情、そして国家への献身が交錯するストーリーは、多くの視聴者の胸を打ち、当時の日本における女性の社会的役割の変化を象徴する重要な作品となりました。

キャストとスタッフ

演じるキャストには、当時の人気女優たちが名を連ねています。上野すみ子役には原節子、松本よしえ役には高峰秀子、後藤あき子役には山根寿子が抜擢されました。監督は佐伯清が担当し、特撮技術には円谷英二が関与しています。映画は、時代を超えて多くの人々に愛され続け、戦争という悲劇の中でも希望の光を描いています。

この作品は、戦争の影響を受けながらも、女性たちが強く生きる姿を通じて、今の世代に多くのメッセージを届けています。

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