通信士

通信士とは

通信士（つうしんし）とは、電気通信設備を使った情報交換に従事する専門家を指します。通信士の役割や職務は、時代とともに変遷してきました。この文では通信士という職業の背景や歴史的変遷について詳しく説明します。

21世紀の通信士と技術の進化

21世紀における電気通信設備は、ほぼ完全に自動化されており、通常、操作は通信端末の利用者に限定されています。しかし、技術が未熟だった時代には、情報と電気信号の変換や通信回線の設定は、すべて手動で行われるものでした。当時、通信士の職務は主に文字情報のやりとりであり、電信技士や無線士といった呼称でも知られています。19世紀初頭に有線電気通信が登場し、20世紀中頃からは、船舶や航空機における無線通信の専門家としての通信士が確立されました。

有線電信の時代

19世紀初頭に登場したモールス式通信は、短点と長点からなるモールス符号を使用し、電気的手段で情報を送受信する方法です。モールス通信は、片手による電鍵の操作で送信し、受信側では耳だけで受け取ることができるため、受信側は他の作業をしながらでも通信可能でした。このような優れた操作性により、モールス通信は広く普及しました。19世紀後半には、世界中で実用的なモールス通信士が誕生し、国境を越える通信のために国際基準が策定される動きが始まりました。

日本における通信士の歴史

日本の電気通信事業は、国家の管理下から出発しました。昭和時代の日本では、逓信省が公衆通信を管理しており、有線通信させる通信士はほぼ公務員の立場でした。電報発信の際、郵便局が主要な窓口となっており、モールス通信が利用される局も多くありました。1920年代以降は印刷電信機の導入が進み、戦後、高度経済成長期の到来と共に有線モールス通信士は徐々に姿を消しました。

無線通信士の資格制度

20世紀初頭、無線通信の重要性は国防に深く関わるため、国家管理が求められました。そのため、国家によって認定された有資格者に通信業務が委ねられるシステムが確立されました。無線通信士の資格は、職業に必要な技能を身につけるための試験を通じて取得されます。日本においても、1915年に無線[[電信法]]が制定され、無線通信士は技術職として確立されました。

船舶・航空における通信士

船舶における無線通信士は、初めて無線が実用化された時期に登場しましたが、航海の安全性が懸念されるきっかけとなったのはタイタニック号の沈没でした。この事件を受けて、無線通信士の能力基準が国際的に定められるようになりました。日本では、1908年から船舶に無線装置の装備が強制され、専任通信士の必要性が高まりました。

また、航空機の運航にも通信士が従事し、航空機における無線電話も一般化しました。航空通信士の資格も戦時中に法制化されましたが、その地位は不明確でした。戦後は技術の発展により、操縦士が無線全般を担当するようになり、専任の通信士の必要性は少なくなりました。

現在の通信士の職場

今日の通信士は、主に無線通信の運用に関わっており、船舶や航空機の運航において重要な役割を担っています。しかし、技術の自動化が進行する中で、通信士の求められる技能は変わりつつあります。今や、利用者自身が通信端末を操作できる環境が一般的となり、独自の職業としての通信士はその数を減らしています。様々な分野で通信士の専門知識が求められる一方で、職場環境は確実に変化し続けています。

もう一度検索