北クルディスタン

北クルディスタンの概要

北クルディスタン、またはトルコ領内のクルディスタンは、クルド人が主に居住する地域の一部です。この地はトルコの南東部および東部に広がっており、公式な行政区分は整っていないものの、約19万平方キロメートルの広さを誇り、トルコ全体の約1/3を占めています。

地理と経済

北クルディスタンは、トルコの17の県から成り立っています。これには、エルズィンジャン、エルズルム、スィヴァス、カルス、マラティヤ、トゥンジェリ、エラズー、ビンギョル、ムシュ、アール、アドゥヤマン、ディヤルバクル、スィイルト、ビトリス、ヴァン、シャンルウルファ、マルディン、ハッキャリなどが含まれます。各県の境界はあいまいで、正確な地域の範囲を特定するのは難しいとされています。

この地域はトロス山脈の一部で、3700メートルを超える山々と乾燥した高原が特徴です。厳しい大陸性気候により、夏は非常に暑く冬は極寒ですが、肥沃な土地が広がり、伝統的に穀物や家畜が生産されてきました。地域経済は主に畜産業と小規模農業に依存しており、国境地帯では密輸（特に石油）も重要な収入源となっています。しかし、長年の紛争や高い失業率が影響し、多くの住民が他地域や国外への移住を余儀なくされています。

歴史的背景

中世において、クルド人の居住地域では統一国家が形成されることはありませんでしたが、マルワーン朝などの王朝によって支配されていました。オスマン帝国が広がると、クルド地域はその影響下に置かれ、1527年にはウィラーヤティ・クルディスターンという名称が使われていました。クルドの首長たちは一定の自治を享受していたが、それは地域の地政学的な重要性に依存していました。

オスマン帝国末期には、帝国の衰退と共にクルドのアミール領は事実上独立状態となり、19世紀に入るとオスマン政府はその影響力を取り戻そうとします。しかし、スーフィー教団やその指導者たちによる反乱が続出し、特にシェイフ・ウベイドゥッラー・ネフリーの活動が注目されました。第一次世界大戦後、オスマン帝国の崩壊はクルド地域の分割を引き起こし、彼らの生活様式には大きな影響を及ぼしました。

対立と現在の状況

トルコによるクルド地域の編入に反対する多くのクルド人が現れ、長期間にわたる独立紛争が勃発しました。1920年代から30年代には、シャイフ・サイードの反乱やアララトの反乱など大規模な闘争が相次ぎましたが、これらはトルコ政府によって武力で制圧されました。文化的、政治的な活動は厳しく制限され、地域は外国人立入禁止区域となりました。

1980年代にはPKK（クルディスタン労働者党）の活動が活発になり、戒厳令が施行されました。1990年代には激しいゲリラ戦が展開され、内戦の様相を呈しました。これにより多くの村が破壊され、住民は避難を余儀なくされました。2000年代にはPKKのリーダーの逮捕を機に、状況は少しづつ改善される兆しを見せましたが、依然として根強い対立と緊張が続いています。

近年、クルド人の文化活動に対する規制は緩和されているものの、政治的迫害は続いており、シリア拠点のクルド民兵組織との協力関係も影響を与えています。2015年のトルコ総選挙では、クルド政党が議席を大幅に増やし、エルドアン大統領率いる与党は過半数を逃したものの、第1党としての座を維持しました。

このように北クルディスタンは、地理的な特色や複雑な歴史的背景と共に、現代においても多くの問題を抱える地域であることが明らかです。

もう一度検索