クルディスタン

クルディスタン

クルディスタン（クルド語: كوردستان / Kurdistan）は、中東の北部に広がる地域で、トルコ、イラク、イラン、シリアの一部にまたがって位置しています。この地域は、主にクルド人が居住する地理的範囲であり、タウルス山脈とザグロス山脈の東部延長部を含んでいます。クルディスタンの面積はおおよそ392,000平方キロメートルに及び、チグリス川とユーフラテス川の中上流域を中心に広がっています。

「クルド人の地」または「クルド人の国」を意味するこの名称は、ペルシア語ではコルデスターンと呼ばれ、イランには同名の州が存在します。また、イラクには自治区としてクルディスタン地域が、シリアにはロジャヴァという自治区があります。

クルディスタンという名前は、12世紀にセルジューク朝の支配者アフマド・サンジャルによって「エルデラン」と呼ばれる地域に設置された州の名称から初めて使用されたと考えられています。この地域におけるクルド人の居住は古代にまでさかのぼり、特定の都市では約8,000年前の集落遺跡が発見されています。特にピランシャールやエルビルの周辺には、先史時代の人々の痕跡が残されています。

古代の歴史

クルディスタンに関する最古の記録は、紀元前3000年頃のシュメールの楔形文字の粘土板に登場します。この中には「Kar-da」や「Qar-da」という名称があり、ゴッドフリー・ロールズ・ドライヴァーによって「クルド」の初期形であると解釈されています。この地域は、古代ローマ時代にはクルド人の王国「カルドゥチ」が存在し、彼らは北メソポタミアを支配していました。カルドゥチは、ローマ帝国の影響下で長い間存在していた王国であり、彼らは紀元前189から384年の間にこの地を支配していました。

また、歴史的記録には「クルドの地」という言葉が見られ、特定のキリスト教の文書ではアブディショという聖者の故郷が「クルドの地」であったことが言及されています。

中世のクルディスタン

10世紀後半には、クルディスタン地方に5つの地方王朝が設立され、北側にはシャッダード朝やラワード朝、東側にはハサナワイフ朝やアナーズ朝、西側にはマルワーン朝があった。これらの王朝は、カリフやシャーの影響を受けながら、半独立的な政治を展開していたことが知られています。1597年に書かれた「シャラフナーメ」には、当時のクルディスタンの様相が詳述されています。

近代の分断と戦争

16世紀に、クルド人居住区はサファヴィー朝とオスマン帝国に分割されました。特に1514年のチャルディラーンの戦いと1639年のズハーブ条約によって、その状況が固定化されました。第一次世界大戦後、連合国はオスマン帝国の旧領を分割する計画を立てましたが、結果的にクルディスタンの独立にはつながりませんでした。

1946年にはイランのクルド人がソビエト連邦の支援を受けてマハーバード共和国を樹立しましたが、イラン政府の攻撃によって瓦解しました。その後、クルド人は弾圧を受けつつも、自治権を求める活動が続きました。1991年の湾岸戦争の終結時には、北イラクに安全地域が設けられ、クルディスタンは自治的な政府を築くに至りました。

近年ではシリア内戦においてクルド人民防衛隊を中心とする勢力がシリアの一部を支配しています。クルディスタンの歴史と現状は、地政学的な観点から見ても非常に複雑であり、今後の動向が注目されています。

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