北バナト郡

北バナト郡（Севернобанатски округ）

北バナト郡は、セルビア北部のヴォイヴォディナ自治州に位置する郡です。ハンガリー、ルーマニアとの国境に近く、多様な文化と歴史が織りなす地域として知られています。郡の中心都市はキキンダで、地域の経済、文化の中心地となっています。

地理

北バナト郡は、ヴォイヴォディナ自治州の北端に位置し、バナト地方およびバチュカ地方の一部を含みます。ティサ川がバチュカ地方との境界線となっており、郡内のカニジャ、センタ、アダの3つの自治体はバチュカ地方に属します。肥沃な平野が広がり、農業が盛んな地域です。

基礎自治体

北バナト郡は、以下の7つの基礎自治体で構成されています。

カニジャ（Kanjiža / Magyarkanizsa）
センタ（Senta / Zenta）
アダ（Ada）
チョカ（Čoka / Csóka）
ノヴィ・クネジェヴァツ（Novi Kneževac / Törökkanizsa）
キキンダ（Kikinda / Nagykikinda）

これらの自治体のうち、ノヴィ・クネジェヴァツとキキンダ以外では、ハンガリー人が多数派を占めています。これは、この地域が歴史的にハンガリーの影響を強く受けてきたことを示しています。

住民

北バナト郡は、セルビア人、ハンガリー人、ロマ人など、多様な民族が共存する地域です。2002年の国勢調査によると、民族構成は以下の通りです。

ハンガリー人：78,551人（47.35%）
セルビア人：72,242人（43.55%）
ロマ：3,944人（2.37%）
ユーゴスラビア人：3,018人（1.81%）

言語別では、ハンガリー語とセルビア語がほぼ同数で話されており、ロマ語も一定の割合で使用されています。キキンダとノヴィ・クネジェヴァツではセルビア人が多数派ですが、アダ、チョカ、カニジャ、センタではハンガリー人が多数派です。各自治体に含まれる集落を見ても、ハンガリー人が多数派の集落がセルビア人多数派の集落よりも多くなっています。

文化

キキンダは、文化的な中心地としての役割も担っています。1878年には初の現代的なセルビア人の印刷所が設立され、翌年には初の図書館が開設されました。また、テオドル・イリッチ・チェシュリャル、ニコラ・アレクシッチ、ジュラ・ペツィッチ、ジュラ・ヤクシッチなど、多くの画家を輩出しています。1796年には、この地域で初の演劇がドイツ語で行われました。このように、北バナト郡は多様な文化が交流し、発展してきた地域です。

経済

キキンダは、建築用クレイの生産地として知られており、ヨーロッパ最古の粘土生産会社であるIGM DD Toza Markovićの本社が置かれています。また、キキンダ鉄工所は研磨機を製造し、セルビア国内外で需要があります。25 majでは農業機器や設備を製造しており、エレクトロン（Electron）の製品もセルビア国内外で販売されています。さらに、キキンダでは原油も産出されており、セルビアの貴重な国内産出油田の一つとなっています。

北バナト郡は、多民族が共存し、豊かな文化と経済を持つ地域として、セルビアにおいて重要な役割を果たしています。

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