北京の戦い (1215年)

北京の戦い（1214年 - 1215年）

北京の戦いは、1214年から1215年にかけてモンゴル帝国軍が金朝の首都であった北京大定府（現在の内モンゴル自治区赤峰市寧城県）を包囲し、最終的に陥落させた戦いです。この戦いは、モンゴル帝国の華北侵攻における重要な転換点となりました。

背景

北京大定府は、遼朝時代からモンゴル高原と華北を結ぶ要衝として重視されていました。金朝もこの地を重要拠点とみなし、多くの人口を抱える都市として発展していました。

1211年、チンギス・カン率いるモンゴル軍は金朝への侵攻を開始しました。1214年に一時的に和議が結ばれましたが、金朝が首都を河南の開封へ遷都したことで、モンゴル側はこれを和議違反とみなし、再び侵攻を開始しました。この際、チンギス・カンは左翼万人隊長のムカリに遼西地方の攻略を命じました。

モンゴル軍の侵攻を受け、多くの漢人がモンゴル側に投降しました。彼らはモンゴル軍の拠点である魚児濼（現在のダライ・ノール）周辺に移住しましたが、より良い居住地を求めていました。その中で、史氏一族は北京大定府を新たな拠点として目をつけ、モンゴル軍に攻略を働きかけました。史天倪はムカリに対し、「大寧（北京大定府）を得れば、金朝は遼陽（遼東の中心都市）を維持できなくなるでしょう」と進言し、攻略を主導しました。

戦闘の経過

当時、北京には金朝の守将である奥屯襄が駐屯していました。奥屯襄は20万の軍勢を率いてモンゴル軍を迎え撃ちましたが、大敗を喫し、北京に籠城しました。1214年8月、ムカリ率いるモンゴル軍は北京の包囲を開始しました。

包囲戦には、史氏一族をはじめとする多くの漢人がモンゴル軍に協力しました。ムカリ軍は周辺の都市を次々と陥落させましたが、北京大定府は容易には降伏しませんでした。包囲戦は長期化し、1215年まで続きました。

包囲戦中、史天祥は金朝の将である完顔胡速を捕虜にしました。ムカリは完顔胡速を処刑しようとしましたが、史天祥は「将を一人殺したところで敵軍を弱めることはできず、むしろ人々の敵愾心を煽るだけだ」と進言し、完顔胡速を助命し、モンゴル軍に登用するよう勧めました。ムカリはこれを受け入れ、完顔胡速を千戸に任じました。

一方、北京を守る金朝側では、1215年正月に北京宣撫使兼留守の奥屯襄が配下の完顔習烈に殺害されるという事件が発生しました。その後、完顔習烈もまた配下に殺害され、金朝側の統制は著しく低下しました。

1215年3月、モンゴル軍は総攻撃を開始しました。史懐徳は城壁攻略の先陣を切り、敵将2名を捕虜にするなどの功績を挙げましたが、流れ矢に当たり戦死しました。史懐徳の犠牲もあり、モンゴル軍はついに北京を陥落させることに成功し、奥屯襄の後任として北京を守備していた元帥の寅答虎・烏古倫らは降伏しました。

戦後

戦後、ムカリ配下のウヤルが北京路都元帥に、史秉直が尚書行六部事に任じられ、北京を統治しました。史氏一族はその後、真定府に移住するまで北京大定府を根拠地としてモンゴル帝国内での地位を確立し、やがて漢人世侯の代表的存在として繁栄することとなりました。

『元朝秘史』の記述

『元朝秘史』にも北京城攻略に関する記述がありますが、『元史』などの漢文史料とは内容が異なっています。『元朝秘史』では、ジョチ・カサルが遼西諸郡を攻略し、北京城を攻め取ったとされています。しかし、これは複数の史実を混同して記載されたものと考えられています。

結論

北京の戦いは、モンゴル帝国が華北を制圧する上で重要な一歩となりました。史氏一族をはじめとする漢人勢力の協力も、モンゴル軍の勝利に大きく貢献しました。この戦いを経て、史氏一族はモンゴル帝国内で独自の地位を築き、その後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

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