北山用水

北山用水：富士宮市を潤す歴史的な灌漑用水路

北山用水は、静岡県富士宮市に位置する灌漑用水路であり、地域では本門寺用水とも呼ばれています。この用水路は、天正10年（1582年）に掘削が開始され、芝川を水源としています。現在では全長約10kmに及び、110haの農地を潤しています。

北山用水の起源と歴史

北山用水の歴史は、徳川家康の命によって始まったとされています。当時の判物には、上意により芝川を水源とし、横手沢村を取水口とすることが記されています。また、用水路の維持管理のため、水番を担う堀久保の百姓4軒には諸役免除が与えられました。この用水路は、地域の農業を支える重要な役割を果たし、その後も拡張を重ねてきました。

かんがい施設遺産としての認定

2023年11月、北山用水は国際かんがい排水委員会（ICID）によって、かんがい施設遺産として認定・登録されました。この認定は、北山用水が持つ歴史的価値と、その水利技術が国際的に評価されたことを意味します。

拡張と新田開発

北山用水は、その歴史の中で徐々に拡張され、最終的には9つの村々に水を供給するようになりました。当時の様子を描いた「北山用水絵図」には、用水路に設けられた掛樋、埋樋、粗朶堰などの構造物が描かれています。

寛政10年（1798年）頃には、万野原の新田開発が計画されましたが、水不足が課題でした。そのため、北山用水の拡張が不可欠となり、幕府への働きかけが繰り返されました。文化7年（1810年）には正式に拡張が決定し、万野原への通水が実現しました。これにより、地域の農業生産性が向上し、人々の生活を支える上で重要な役割を担いました。

水力発電への利用

北山用水は、その水流を利用して水力発電にも活用されています。現在、富士宮市内には北山用水から取水する水力発電所が4箇所存在し、再生可能エネルギーの供給にも貢献しています。

まとめ

北山用水は、その長い歴史の中で、地域の農業を支え、人々の生活を豊かにしてきました。その卓越した水利技術と歴史的価値は、かんがい施設遺産としての認定からも明らかです。今後もこの用水路は、地域の発展と持続可能な社会の実現に貢献していくことでしょう。

参考文献

関根省治『近世初期幕領支配の研究』雄山閣出版、1992年。ISBN 4-639-01111-3。
大高康正『古地図で楽しむ富士山』風媒社、2020年。ISBN 978-4-8331-0190-5。
* 農林水産省『北山用水（静岡県富士宮市）』（プレスリリース）
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kaigai/ICID/his/attach/pdf/abstruct-11.pdf

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