北川政夫

北川政夫は、1910年2月に旧満州の大連市で生を受け、1995年8月4日に生涯を閉じました。彼は東京帝国大学で植物学を修め、その知識と情熱を基に、戦前から中国東北部（旧満州）の植物研究に深く関わりました。

彼の研究は、大陸科学院研究官としての活動中に大きく花開きました。彼はこの地で精力的に標本を収集し、詳細な地域植物誌を編纂することで、これまで十分に解明されていなかった中国東北部の植物相を明らかにしました。彼の貢献は、単に既存の植物を記録するだけに留まらず、多くの新種植物を記載するという形で、植物学の世界に新たな知見をもたらしました。その中には、ボウフウ（Saposhnikovia seseloides auct. non (Hoffm.) Kitag.）の記載も含まれています。

戦後の1947年からは、農林技術研究所、農業技術研究所で研究活動を続け、1950年からは横浜国立大学の教授として教鞭を執りました。研究者としてだけでなく、教育者としても後進の育成に尽力したことが伺えます。

北川政夫は、研究成果を数多くの著書として発表しました。主な著書としては、初期の研究成果をまとめた『關東州植物誌』（1927年）、『滿洲國植物考』（1939年）があります。また、中井猛之進との共著である『熱河省産新植物』（1934年）は、共同研究の成果を示すものです。一般向けの書籍としては、宮脇昭との共著『生きている植物の四季』（1958年）があり、植物の魅力を広く伝える役割を果たしました。さらに、大井次三郎の著書を改訂した『新日本植物誌 （顕花篇）』（1983年）は、日本の植物学研究に大きく貢献しました。

彼の業績は、『植物文化人物事典』（大場秀章編集、日外アソシエーツ、2007年）にも収録されており、その生涯と功績は、日本の植物学史において重要な位置を占めています。

北川政夫の研究は、中国東北部の植物相の解明に大きく貢献しただけでなく、植物分類学の発展にも寄与しました。彼の詳細な研究と記録は、後世の研究者にとって貴重な資料となっています。また、教育者としての活動を通じて、多くの植物学者を育成し、その知識と情熱は次世代へと受け継がれています。彼の名前は、日本の植物学の歴史に永く刻まれることでしょう。

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