北川殿

北川殿（きたがわどの）と桃源院殿（とうげんいんどの）

北川殿、またの名を桃源院殿は、戦国時代における著名な女性であり、駿河の守護であった今川義忠の正室として名を残しています。彼女の出自は不明な点も多いですが、弟である伊勢宗瑞（北条早雲）との関連が見られ、父は伊勢盛定、母は伊勢貞国の娘であるとされています。父は室町幕府において重要な役割を果たし、将軍足利義政の側近として仕えていました。そのため、義忠との出会いも運命づけられていたのかもしれません。

応仁元年（1467年）頃、北川殿は義忠の正室となり、静岡市の駿府館に住み始めました。彼女には長女である栄保を含む子どもたちが生まれ、文明3年（1471年）には嫡男龍王丸（後の今川氏親）も誕生しました。

しかし、文明8年（1476年）に義忠が戦において討ち死にしてしまうと、家督を巡る争いが勃発しました。わずか6歳の龍王丸は、家督争いの渦中に巻き込まれ、北川殿は彼を連れて逃げざるを得ませんでした。その後、事態は複雑化し、彼女は弟の盛時（宗瑞）に助けを求ることになりました。盛時は、家督争いを調停し、龍王丸が成人するまでの間、家督を範満に代行させることを決定。北川殿はその後、龍王丸と共に安全な場所へと移動しました。

文明11年（1479年）、前将軍足利義政から龍王丸の家督相続が認可されましたが、範満は家督代行の地位を保持し続けました。再度盛時の助けを求めた北川殿は、彼が範満を討ち滅ぼす手助けをすることになりました。そして、龍王丸はついに家の当主としての地位を確立。この時期、北川殿も駿河に帰還し、現在の静岡市に別荘を構えたため、北川殿と称されるようになりました。

長享元年（1487年）には、龍王丸が名実ともに今川家の当主となり、北川殿はその生活をともにしました。この頃、長女栄保が公家に嫁ぐなど、今川家は公家社会との結びつきを深めていきます。以降も、北川殿は家族や宗瑞、連歌の師匠たちとの交流を重ね、大きな影響力を持つ存在となっていきました。

しかし、時は流れ、大永6年（1526年）6月に夫の氏親を亡くし、享禄2年（1529年）5月26日には北川殿自身がこの世を去りました。戒名は「徳願寺殿慈雲妙愛大姉」とされ、静岡市内には彼女の菩提寺が存在します。

近年の研究によって、北川殿は戦国時代の影響力ある女性として再評価されています。彼女についての小説や漫画も数多く存在し、歴史の中での存在感は今も尚新鮮です。特に、司馬遼太郎の作品やゆうきまさみの漫画は、彼女の物語を伝える重要な資料となっています。

北川殿の存在は、戦国時代における女性の役割や家庭内政治の複雑さを象徴するものであり、彼女の足跡は今も多くの歴史愛好者に影響を与えています。

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