北方車庫前停留場

北方車庫前停留場

北方車庫前停留場（きたがたしゃこまえていりゅうじょう）は、かつて福岡県北九州市小倉南区北方に位置していた、西日本鉄道（西鉄）北方線の廃止された電停です。当停留場はその名の通り、北方線の車両基地であった北方車庫に併設されており、路線の運行管理における重要な拠点として機能していました。

ここでは、この北方車庫前停留場と、隣接していた北方車庫の歴史、構造、そして廃止後の状況について解説します。

概要

当停留場と北方車庫の歴史は、1920年（大正9年）9月に遡ります。当時の小倉電気軌道線において、電化工事と一部区間の軌道移設が実施されたのに伴い、電車の車両基地（車庫）と営業所を兼ねた施設として新たに開設されました。

開業以来、北方車庫前停留場は北方線の運行上の要衝となり、乗務員の交代や車両の出入りといった業務が日常的に行われていました。しかし、時代の流れとともに北方線自体の役割が変化し、1980年（昭和55年）11月2日、北方線の全線廃止とともに、この停留場もその役目を終え、廃止されました。

歴史

1920年（大正9年）9月21日：小倉電気軌道線の電化と、一部区間が新香春街道上に移設されたのに伴い、北方車庫が開設され、停留場も開業しました。
1942年（昭和17年）3月2日：九州電気軌道が小倉電気軌道を合併しました。
1942年（昭和17年）9月22日：西日本鉄道が設立され、北方線が同社の路線となり、北方車庫前停留場も西鉄の停留場となりました。
1980年（昭和55年）11月2日：北方線全線廃止に伴い、停留場も廃止されました。

停留場構造

停留場は、上下線別に乗降場が設けられた2面2線のシンプルな構造でした。しかし、道路の幅員に限りがあったため、乗客が安全に待機・乗降するための安全地帯（ホーム）は設置されていませんでした。代わりに、路面上に白線が引かれ、その範囲が乗降エリアとして示されていました。

また、隣接する北方車庫や留置線へ出入りするための線路や、上下線間を車両が移動するための渡り線も設けられており、運行拠点としての機能を支える構造となっていました。

北方車庫

北方車庫は、1920年（大正9年）9月、小倉電気軌道線の電化に合わせて開設された車両基地です。北方線の軌道が敷設されていた香春街道の東側に設けられ、車両が出入りする線路は、北方方面から東側へ分岐する形で設置されていました。

その後、車両の増備に伴い施設の拡張が必要となりました。当初の東側敷地だけでは手狭になったため、香春街道を挟んだ反対側、西側にも用地を確保し、そこに2本分の留置線が追加されました。

西鉄の他の路面電車（北九州線など標準軌区間）は、日常的な検査は各車庫で行い、大規模な全般検査は砂津工場で行うという体制でしたが、北方線は軌間（線路幅）が異なっていたため、専用車両の全ての検査・修繕業務は、この北方車庫で一括して行われていました。

香春街道に面した東側の車庫入口付近には営業所が併設されており、ここでは北方線の運行全体を管理する操車業務が行われ、路線の円滑な運行を支えていました。

廃止後の状況

北方車庫前停留場の乗降場は、路面上の白線のみであったため、路線廃止後には完全に撤去され、現在ではその痕跡を見ることはできません。

一方、北方車庫の跡地は、路面電車の廃止後、その代替として運行されたバスの拠点として活用されました。西鉄バス北方自動車営業所がこの場所に開設され、地域交通の一翼を担いました。

しかし、1985年（昭和60年）の北九州高速鉄道小倉線（モノレール）開通に伴い、北九州市内のバス運行体制が再編されました。これにより北方自動車営業所は閉鎖されることとなりました。

現在、旧北方自動車営業所があった車庫跡地にはスーパーマーケット「サンク」が建ち、賑わいを見せています。また、香春街道を挟んで反対側に設けられていた留置線跡地は、現在では駐車場として利用されており、かつて電車の運行拠点であった場所の姿は大きく変わっています。

隣の停留場

西日本鉄道北方線
城野停留場 - 北方車庫前停留場 - 北方一丁目停留場

参考文献

奈良崎博保「追跡風土記 西鉄北九州線をゆく(3)」『鉄道ジャーナル』1971年11月号（No.55）、鉄道ジャーナル社
奈良崎博保『福岡・北九州 市内電車が走った街 今昔』JTBパブリッシング、2002年

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