北方限界線

北方限界線（NLL）とは

北方限界線（Northern Limit Line, NLL）は、朝鮮戦争休戦後の1953年8月30日に、国連軍によって設定された、朝鮮半島周辺海域における韓国と北朝鮮間の事実上の境界線です。主に黄海（韓国では西海、北朝鮮では朝鮮西海）上の境界線を指しますが、日本海側にも存在します。

設定の背景

1953年の朝鮮戦争休戦後、陸上境界線は軍事境界線として合意されましたが、海上境界線については協議されませんでした。国連軍は、海上での偶発的な衝突が戦争再発につながることを懸念し、海上境界線を設定する必要性を感じました。そこで、休戦協定発効から約1ヶ月後、NLLが設定されました。

当初、北朝鮮はNLLに対して公式な異議を唱えることはありませんでした。1959年には、北朝鮮の年鑑でNLLが「軍事分界線」として表記され、1992年の南北基本合意書でも事実上の海上不可侵境界線として確認されました。

しかし、1973年12月、北朝鮮は黄海道と京畿道の道界線の延長線以北水域を自国の沿海と主張し、西北島嶼への船舶の事前許可を要求しました。これに対し、国連軍司令部は停戦協定の精神に反すると反駁しました。

現在の状況

現在、NLLは韓国と北朝鮮の事実上の海上国境として機能していますが、北朝鮮は1999年にNLLより南寄りに「海上軍事境界線」を宣言し、NLLの再設定を主張しています。NLL周辺海域では、過去に複数回の軍事衝突が発生しています。

主な出来事

半島西側海域

延坪海戦: 1999年と2002年に、北朝鮮がNLLを越境し、韓国軍との間で戦闘が発生しました。これにより、両軍に死傷者が出ています。
大青海戦: 2009年、NLL付近で両国間の銃撃戦が発生しました。
天安沈没事件: 2010年、韓国海軍の哨戒艦「天安」が爆発し沈没。韓国軍と国際調査団は、北朝鮮の魚雷攻撃が原因であると断定しました。
延坪島砲撃事件: 2010年、北朝鮮が民間人が住む延坪島に向けて砲撃し、民間人を含む死傷者が出ました。
漁業指導員射殺事件: 2020年、北朝鮮へ渡ろうとした韓国の漁業指導員が、北朝鮮軍に射殺された事件です。

また、北朝鮮の漁船がNLLを越境して操業することが度々あり、韓国海洋警察庁との間で小競り合いが頻発しています。

半島東側海域

2017年、NLL付近で操業していた漁船が南側に漂流し、北朝鮮に送り返されました。
2019年、NLL付近で操業していたイカ釣り漁船の乗組員2人が、殺害容疑で北朝鮮に送還される事件がありました。この事件は、後の調査で事実が捏造された疑いがあることが判明しました。

年表

1959年: 北朝鮮の年鑑でNLLを軍事分界線と表記
1973年: 北朝鮮がNLLに対する異議を表明
1992年: 南北基本合意書でNLLを事実上の海上不可侵境界線として確認
1999年: 第1延坪海戦
2002年: 第2延坪海戦
2009年: 大青海戦
2010年: 天安沈没事件、延坪島砲撃事件

北朝鮮の主張

北朝鮮はNLLを一方的な境界線であると主張し、再設定を要求しています。1999年には、NLLより南側に「海上軍事境界線」を宣言しました。また、白翎島、延坪島周辺海域を、米艦艇や民間船舶が通航できる水域として指定しています。

再設定議論

韓国は、NLLが事実上の境界線として機能していると主張していますが、北朝鮮はNLLの無効を主張しています。1991年の南北基本合意書では、海上不可侵境界線については今後協議するとされています。

2007年には、当時の韓国大統領がNLLは領土線ではないと発言し、問題となりました。

まとめ

北方限界線は、朝鮮半島の海上における緊張の根源であり、軍事衝突のリスクを常に抱えています。北朝鮮の主張を踏まえ、NLLの再設定に向けた協議が行われるべきです。

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