北沢浮遊選鉱場

北沢浮遊選鉱場：佐渡金山を支えた巨大選鉱所の遺構

北沢浮遊選鉱場は、かつて新潟県佐渡市（旧相川町）に存在した、佐渡金山の選鉱施設です。その規模と独特な景観から「佐渡のラピュタ」とも呼ばれ、多くの観光客を魅了しています。

歴史

1937年（昭和12年）に日中戦争が勃発すると、国策として鉱物資源の増産体制が敷かれました。これに伴い、佐渡金山では1937年から1940年にかけて大規模な選鉱施設の整備が行われました。その中心となったのが、当時最新技術であった浮遊選鉱法を用いた北沢浮遊選鉱場です。月間5万トンもの原鉱を処理する能力を持ち、1940年には佐渡金山史上最高の産出量を記録しました。

しかし、1952年（昭和27年）に鉱山が大幅に縮小されると、北沢浮遊選鉱場もその役割を終え、廃止されました。その後、跡地の一部はプールやゴルフ練習場として利用された時期もありましたが、現在は当時のコンクリート構造物が残るのみとなっています。

遺構

現在、北沢浮遊選鉱場には、階段状のコンクリート躯体と、高さ50mのシックナー（濃縮器）が1基残っています。シックナーは、選鉱の過程で発生する鉱滓（こうさい）と呼ばれる泥状の廃棄物を沈殿・濃縮させるための施設です。また、周辺には明治時代から稼働していた旧北沢青化・浮選鉱所や、旧北沢火力発電所の遺構も残されており、当時の鉱山開発の様子を偲ぶことができます。

現在の様子

2010年には広場が整備され、グッドデザイン賞を受賞しました。2018年からは期間限定で夜間ライトアップも行われるようになり、幻想的な雰囲気を楽しむことができます。2022年（令和4年）には、選鉱場前にあった市所有の倉庫がリノベーションされ、交流拠点「KITAZAWA KICHI」（キタキチ）がオープン。2階にはカフェ「北沢Terrace」が設けられ、選鉱場を眺めながら食事を楽しむことができます。

世界遺産登録への動き

佐渡金山は、2010年11月に世界遺産の正式候補となり、紆余曲折を経て2022年にユネスコに推薦されました。「鎖国下で独自に発展した手工業（鉱業）技術」が評価の対象となり、史跡としては江戸時代の範囲に限定されましたが、重要文化的景観としては北沢地区も含まれていました。しかし、2023年のユネスコ諮問機関による現地視察の結果、「相川鉱山町の中で明治時代以降の影響が強い北沢地区は除外すべき」との指摘を受け、最終的に登録実現のため北沢地区は候補から削除されました。

北沢という地名の由来

北沢という地名は、相川の南を流れる間切川が南沢と呼ばれていたのに対し、浮遊選鉱場内を流れる濁川が通称として北沢と呼ばれたことに由来します。濁川は、選鉱作業で使用した廃水の処理に利用されていました。正式な町名ではありません。

アクセス

* 佐渡金銀山を巡る：鉱山施設コース - 新潟県教育庁 世界遺産登録推進室

北沢浮遊選鉱場は、佐渡金山の歴史を語る上で欠かせない遺構であり、その独特な景観は訪れる人々を魅了し続けています。

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