北海 (複葉機)

北海：千歳の空を開いた複葉機

北海（ほっかい）は、北海道の小樽新聞社が使用した複葉機であり、その存在は千歳市の航空の始まりを象徴しています。この機体は、旧日本海軍の一〇式二号艦上偵察機を民間用に改修した「三菱式R2.2」です。千歳村の住民の努力により造成された千歳着陸場に、北海は初めてその歴史的な足跡を残しました。

北海の誕生と飛行

1926年、大正15年、小樽新聞社と北海タイムス（後の北海道新聞）が販売競争の一環として、飛行機の導入を図りました。この際、小樽新聞社は東亜飛行専門学校や伊藤飛行機製作所の協力を仰ぎ、元日本海軍が保有していた一〇式艦偵機を2機入手。そして、この機体に「北海」の名が与えられました。

北海第1号機は、完成後すぐに東京立川から札幌興農園を目指す縦断飛行を行いましたが、着陸後にタキシング中に事故を起こし、着陸脚を破損してしまいました。しかし、その後の8月31日には北海第2号機も無事に飛行を果たし、この機体は宣伝ビラの散布などの活動に使われました。

特筆すべきは、北海第1号機が標準的な三菱式R2.2の複座機からコックピットが3座に改修された点です。この変更により、操縦士がサポートと共に多くの人を運ぶことが可能となりました。

千歳着陸場と村民の協力

同じく1926年の8月、北海道鉄道の札幌線が開通したことを受け、小樽新聞社は千歳にサケのふ化場の見学を兼ねた旅行会を企画しました。地域の住民は協力的で、食事を提供するためにお茶や昼食の準備を快諾しました。そのお礼として、小樽新聞社は村上空を飛行することを提案しました。

この時、多くの村民は飛行機を見るのが初めての経験で、ぜひとも着陸させてほしいと頼みました。しかし、当時は千歳に飛行場がなかったため、最初は難色を示されました。そこで、村民大会が開催され、急遽着陸場を整備することに決定し、農具を使って2日間で200m以上の長さと100mの幅を持つ着陸場が設けられました。

1926年10月22日、酒井憲次郎操縦士ら3名が搭乗した北海第1号機は、村民が作った滑走路に見事に着陸を成功させました。着陸の際には約1万人の村民が集まり、操縦士に花束を手渡すという感動的な瞬間が訪れました。しかし、その頃にはエンジンの不調が頻発しており、1927年には小樽新聞社の航空部は活動を休止するに至りました。

記念碑とモデルの展示

現代において、千歳市の空港公園には「村民顕彰の碑」が設置されています。また、北海1号機と酒井操縦士のブロンズ像もあり、毎年10月22日には関係者による献花式が行われています。

さらに、北海道空港が寄贈した北海1号機の原寸大モデル（全幅12m、全長7.9m、全高2.9m）は、蘭越浄水場の管理棟で展示されていましたが、2025年に千歳市役所本庁舎ロビーに移設される予定です。

関連項目

この歴史的な飛行機の詳細な情報を知ることで、当時の航空機の進化や地域社会の協力の重要性を感じられることでしょう。北海は、ただの航空機ではなく、地域の人々の情熱と努力の象徴として、千歳の空の歴史に深く根付いています。

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