北海タイムス

北海道を舞台にした地方新聞『北海タイムス』の盛衰記

1887年、札幌で誕生した『北海新聞』は、その後『北海道毎日新聞』と改称し、阿部宇之八氏らの経営の下、北海道の地域社会に根差した報道活動を展開しました。1901年には『北門新報』と『北海時事』との合併を経て『北海タイムス』として新たなスタートを切ります。

しかし、太平洋戦争下の1942年、戦時統合によって『北海道新聞』に吸収合併され、その歴史に幕を閉じます。終戦後、1946年には旧スタッフらが中心となり『新北海』が創刊。同年には『夕刊北海タイムス』も北海道新聞の系列紙として発行されました。やがて『新北海』は『夕刊北海タイムス』を合併し、再び『北海タイムス』の名で北海道の地域社会に貢献していくことになります。

1950年代には、小樽タイムス、北海日日新聞、東北海道新聞といった地元紙との合併によって、販売網を全道へと拡大。北海道を網羅する地方紙へと成長を遂げました。しかし、この発展期においても、1953年には釧路地方裁判所での事件においてカメラマンが法廷秩序を乱したとして過料処分を受ける「北海タイムス事件」が発生。報道と取材の自由を巡る裁判は、社会に大きな波紋を広げました。

1950年代後半から1960年代にかけては、東京の主要新聞社が北海道に進出。北海道新聞との競争激化により、北海タイムスは経営難に苦しむことになります。経営多角化として、1959年には札幌テレビ放送（STV）の開局にも関与、さらに日刊スポーツ新聞社や日刊ゲンダイとの提携により北海道版の創刊にも携わりました。

しかし、経営再建は難航し、1990年代には親会社が京都科学技術学園を中心とする「科技専グループ」に変更。新たなオーナーと旧経営陣との対立が激化し、1998年には経営破綻、自己破産を申請し、惜しまれつつも廃刊となりました。長きに渡り北海道の情報を伝えてきた『北海タイムス』の歴史に終止符が打たれたのです。

『北海タイムス』の倒産後、その社員らによって『札幌タイムス』が創刊されるなど、その影響はその後も北海道のメディア業界に波及しました。また、同社が主催していたイベントの一部は読売新聞北海道支社が引き継ぎ、『タイムス雪のひろば』は『よみうり雪のひろば』としてさっぽろ雪まつりにおいて長年親しまれました。

『北海タイムス』は、単なる地方新聞社としてだけでなく、STVの設立にも関わるなど、北海道のメディア発展に大きく貢献しました。その歴史と功績は、北海道のメディア史において重要な足跡として刻まれています。その興亡劇は、激動の時代における地方新聞社の生き残りをかけた戦い、そしてメディア業界の変遷を象徴する出来事として、後世に語り継がれるでしょう。

なお、同社が発行していた『北海タイムス三十五年史』や、増田俊也氏による小説『北海タイムス物語』は、その歴史を知る貴重な資料となっています。CMソングとして親しまれた『タイムスを読もう』も、多くの人の記憶に刻まれていることでしょう。また、かつて『タイムス杯競走』として開催されていたJRA札幌競馬場のレースは、『北海タイムス』廃刊後、『ハーベストステークス』と名称変更されました。

『北海タイムス』の物語は、北海道の地域社会と密接に結びついた地方新聞社の栄光と挫折、そして変革の物語として、これからも語り継がれていくことでしょう。

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