北海タイムス物語

北海タイムス物語

増田俊也による長編小説『北海タイムス物語』は、北海道に実在した地方新聞社「北海タイムス」を舞台にした青春経済小説です。作者自身の経験を色濃く反映させた作品で、2017年度には北海道ゆかりの本大賞を受賞しています。

概要

物語は、主人公の若手記者・野々村巡洋が、全国紙の入社試験に失敗した末に、北海タイムスに入社するところから始まります。彼は取材記者を志望していましたが、配属されたのは紙面編集を行う整理部でした。その上、会社の経営状況は厳しく、年収は社会部長クラスでも200万円程度という状況に愕然とします。

作者の増田俊也は、北海道大学を中退後、実際に北海タイムスに入社しています。その後、中日新聞社に転職しましたが、北海タイムスは数年後に経営破綻し休刊しています。インタビューで増田は、「小説の中ではあるが、北海タイムスをいつまでも存続させたい」という思いを語っています。

本作は、増田が北大柔道部時代をモチーフとした『七帝柔道記』の続編とも言える作品で、2019年にはNHK-FMの青春アドベンチャーでラジオドラマ化もされました。

ストーリー

早稲田大学出身の野々村巡洋は、全国紙の入社試験に全滅し、唯一合格した北海タイムスに入社します。当初は腰掛けのつもりで、翌年には全国紙を再受験する予定でしたが、配属されたのは希望とは異なる整理部でした。取材記者として活躍する夢を抱いていた彼は、この現実に大きなショックを受けます。さらに、会社の低賃金体制を知り、愕然とします。しかし、彼は整理部での仕事を通して、新聞社の裏側や仕事の面白さを見つけていきます。

登場人物

野々村巡洋:
本作の主人公。早稲田大学出身で、全国紙の入社試験に失敗し、北海タイムスに入社。当初は腰掛けのつもりだったが、整理部に配属され、新聞社の仕事の奥深さに触れていく。
権藤:
整理部の教育係で、通称「Mrタイムス」。幼少時に父親を洞爺丸沈没事故で亡くし、タイムス新聞の配達アルバイトで学費を稼ぎ、後にタイムス社に入社した。タイムス社への深い愛着を持っている。
* マツダ:
北海道大学柔道部出身。大学を中退して追加合格で入社した。野々村とは同期扱いで、整理部に所属。作者の増田自身がモデルと思われる。


『北海タイムス物語』は、地方紙の厳しい現実と、そこで働く人々の情熱や葛藤を描いた、読み応えのある作品です。作者の増田俊也自身の経験が色濃く反映されており、リアリティに溢れた物語となっています。

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