北海道旅客鉄道労働組合
北海道旅客鉄道労働組合（JR北海道労組）は、北海道旅客鉄道株式会社における最大の労働組合であり、全日本鉄道労働組合総連合会（JR総連）の一員です。その前身は、国鉄分割民営化に協力した旧鉄労や旧動労などの北海道地区組織が合併して誕生しました。結成当初は「北鉄労」と略称されていましたが、1989年に現在の「JR北海道労組(北鉄労)」に変更され、報道では「道労組」と称されることもあります。2018年2月時点では、JR北海道の社員の約8割にあたる5,530名を組織しており、企業内におけるその影響力は非常に大きいとされています。
警察当局は、JR北海道労組について、その上部団体であるJR総連やJR東日本のJR東労組と同様に、革命的マルクス主義者同盟（革マル派）が「影響力を行使し得る立場に相当浸透している」との見解を示しています（2018年2月23日付の政府答弁書による）。警察は革マル派とJR北海道労組の関係解明に努めているとされ、監視体制を強化している模様です。また、公安調査庁も革マル派がJR総連加盟単組への浸透を図っていることを指摘しています。
JR北海道労組は、基本的に会社側と協力的な関係を築いており、会社の諸施策にも協力する姿勢を見せています。会社幹部が労組主催の行事に参加するなど、友好的な関係が表面上は保たれています。一方で、後述するアルコール検査拒否問題や三六協定違反問題などで会社と激しく対立した事例も存在します。
他のJRグループ労働組合とは異なり、JR北海道労組は公式ウェブサイトを運営しておらず、SNSなどでの情報発信も行っていません。このため、その具体的な活動内容や組織運営には不明瞭な点が多いとされています。ただし、同じJR総連に所属するJR東労組のホームページに、JR北海道労組名義の声明や活動情報が一時的に掲載されることがあります。
社会貢献活動としては、大沼周辺での植樹活動「大沼ふるさとの森づくり」や、首都圏の障害者を北海道旅行に招待し、組合員がボランティアで案内・介助を行う「旅のプレゼント」といった取り組みを実施しています。
しかし、JR北海道労組を巡っては、革マル派の浸透疑惑以外にも、深刻な労使関係や組合運営に関する問題が多数指摘されており、これらの問題は国会でも議論される事態に至っています。これら組合の問題が、2010年以降JR北海道で相次いだ重大な事故や不祥事の原因の一つではないかと推測する見方もあります。例えば、2017年2月には当時の菅義偉内閣官房長官が読売新聞のインタビューで「北海道では過去に色んな事故が起きた。ああいう組合を持っているのはJR北海道だけでしょ」と発言し、組合問題と事故・不祥事との関連性を示唆しました。
JR北海道労組は、会社の経営や人事に強い影響力を行使しているとされています。組合の意向が人事や人選、各種施策に強く反映され、労組の同意なくして会社側が人事権や経営権を行使することが困難な状況にあると指摘されています。このため、JR北海道では1989年以降、労組にとって不都合な社員（他労組組合員や労組内の改革派など）に対する差別や報復と見られる人事が度々行われてきました。また、会社側が他労組との労働協約締結を拒否するといった事態も発生しており、これらの中には労働委員会や裁判所によって不当労働行為と認定された事例も少なくありません。過去には、735系電車の導入を巡る社内対立において、経営会議で決定された方針を組合が事実上覆したこともありました。
さらに、労組が団体交渉の際に、本来交渉窓口であるべき総務部ではなく、運輸部や車両部といった実務を担う「主管部」に直接要求を突き付けるといった行動が見られました。また、会社と一体となって、特にJR北労組などの他労組から組合員を引きはがす工作を行っていた事例も指摘されています。こうした労使間の極端な癒着ぶりは、JR北海道労組に浸透しているとされる革マル派からも批判されるほどでした。
JR北海道労組とJR北海道の間でこれほど深刻な労使癒着が生じた背景には、会社発足当初から経営問題を抱え、その安定化のための合理化を推進する上で、最大労組であるJR北海道労組の協力が不可欠だった会社側の事情と、他労組の存在を認めないというJR北海道労組の「平和共存否定」の方針が一致したこと、そして国鉄時代のような激しい労使・労労対立を避けたいという会社側の意図を労組が利用したことが挙げられています。
1998年頃からJR北海道労組は、「平和共存否定」を掲げ、他の労働組合に対して極めて攻撃的な姿勢を強めました。同時に、組合員に対して、他の組合に所属する社員との一切の交流を固く禁じる指導を行うようになりました。この交流禁止は、会社業務とは関係のない私的な場面にも及び、組合員の結婚式への他労組組合員の出席を断念させたり、組合の垣根を超えた親睦会を実力行使で解散に追い込んだりするなど、徹底した介入が行われたとされています。その結果、JR北海道の社内では、所属する組合が異なるだけで挨拶すら交わせないという異常な人間関係がまかり通る状態となり、これが2010年以降の事故や不祥事の一因となった可能性も指摘されています。
実際、2013年にはJR北労組などが安全確保のために「4労組（JR北海道労組、JR北労組、国労北海道、建交労北海道）共同行動」を呼びかけましたが、JR北海道労組はこの呼びかけを拒否した上、共同行動を提起したJR北労組側の行動を「組織破壊行為」として非難するという事態が発生しました。
JR北海道では2008年11月に乗務員へのアルコール検査制度を導入しましたが、JR他社が全ての乗務員に対して検査を義務付けていたのに対し、JR北海道では検査が任意とされていました。これは、札幌車掌所の若手組合員を発端とするJR北海道労組による強い抵抗があったためとされています。特に釧路運輸車両所では、JR北海道労組に所属する車掌のほぼ全員がアルコール検査を拒否するという異常な状況が発生しました。彼らの拒否理由として、「検査を受けるか受けないかは個人の自由」「前日に飲酒していなければ検査は不要」といった、安全よりも個人の都合を優先する極めて自己中心的な主張がなされました。この事態に対し、保安監査を実施した国土交通省鉄道局は異例の強い言葉でJR北海道労組の姿勢を批判しましたが、アルコール検査の義務化は結局2013年11月まで遅れることになりました。
JR北海道労組の運営においては、深刻な労使癒着や、結婚式への介入に見られるような「平和共存否定」方針に基づく組合員の私生活への干渉などにより、組合に対する不満を抱く組合員に対する排除行為が横行していると指摘されています。集団での恫喝や無視、さらには会社への圧力によって本人の希望しない部署への転勤を強いるといった行為が行われていたとされます。また、労働条件の改善よりも政治活動が優先され、国会議員の後援会への加入を強制したり、政治資金のカンパを強要したりといった事例も報告されています。さらに、JR北海道の給与水準はJR他社と比較して低く、国の問題提起を受けるほどであるにもかかわらず、組合費は基本給の2％（上限6,200円）に1,000円を加算した額が毎月徴収されており、組合費が高額過ぎるという批判も存在します。
JR北海道では、労組の影響力に批判的な改革派の社員が不審な死を遂げる事例が発生しています。2007年に社長に就任した中島尚俊氏は、当時の島田修専務（後に社長）と共に、労組との過度な癒着関係を是正すべく労政改革を推進し、労組の影響力を弱めることに一定の成果を上げました。しかし、2011年5月の石勝線特急列車脱線火災事故後、国土交通省から事業改善命令が出され、その対応に追われる中、同年7月1日にJR北海道労組は労政改革への不満を理由に会社との労使交渉を決裂させました。さらにその1週間後、札幌中央労働基準監督署の調査により、JR北海道本社の「計画部門」における三六協定違反が発覚しました。JR北海道労組はこの三六協定違反を口実に、会社側、特に労政改革を主導した中島社長と島田専務に対する激しい攻撃を開始しました。同時期には、JR北海道労組と関係の深かった会社幹部らが労組に協力して労政改革を頓挫させようとする動きも生じました。その結果、労政改革を事実上白紙に戻す内容の合意文書が会社と労組の間で交わされる事態となりました。労使双方から攻撃を受ける形となった中島社長は精神的に追い詰められ、自殺に追い込まれたとされています。また、島田専務は子会社へ転出させられました。
さらに、2018年1月には、JR北海道労組の内部改革を訴えていた男性社員が、釧路港の埠頭で遺体となって発見されました。この社員は労組中央本部青年部の事務長を務めるなど、次世代を担う優秀な人材として労組内でも期待されていました。しかし、2013年10月に「今は会社存亡の危機であり、組合の垣根を取り払って話し合うべき」と労組内部で発言し、改革を訴えたことが問題視されました。この発言が労組の「平和共存否定」方針に反するとされ、当時務めていたJR北海道労組札幌地方本部札幌運転所分会の書記長の地位を剥奪されます。その後も、彼を慕う若手組合員らと非公式の「勉強会」を開き、労組の内部改革に向けた活動を続けていましたが、2016年にこの勉強会の存在が労組側に露見しました。労組は、この社員を「組織破壊行為に及んだ」と非難し、同年6月の定期大会で「制裁」を検討する「統制委員会」を設置しました。1年間の調査・審議を経て、彼は「組織破壊者」と断定され、2017年6月の定期大会で「満場一致」の「除名」処分が決定され、組合から永久追放されました。その後、会社側もこの社員を畑違いの部署に左遷していました。
これらの問題は、JR北海道の安全運行に深刻な影響を与えている可能性が指摘されており、今後の動向が注視されています。
警察当局は、JR北海道労組について、その上部団体であるJR総連やJR東日本のJR東労組と同様に、革命的マルクス主義者同盟（革マル派）が「影響力を行使し得る立場に相当浸透している」との見解を示しています（2018年2月23日付の政府答弁書による）。警察は革マル派とJR北海道労組の関係解明に努めているとされ、監視体制を強化している模様です。また、公安調査庁も革マル派がJR総連加盟単組への浸透を図っていることを指摘しています。
JR北海道労組は、基本的に会社側と協力的な関係を築いており、会社の諸施策にも協力する姿勢を見せています。会社幹部が労組主催の行事に参加するなど、友好的な関係が表面上は保たれています。一方で、後述するアルコール検査拒否問題や三六協定違反問題などで会社と激しく対立した事例も存在します。
他のJRグループ労働組合とは異なり、JR北海道労組は公式ウェブサイトを運営しておらず、SNSなどでの情報発信も行っていません。このため、その具体的な活動内容や組織運営には不明瞭な点が多いとされています。ただし、同じJR総連に所属するJR東労組のホームページに、JR北海道労組名義の声明や活動情報が一時的に掲載されることがあります。
社会貢献活動としては、大沼周辺での植樹活動「大沼ふるさとの森づくり」や、首都圏の障害者を北海道旅行に招待し、組合員がボランティアで案内・介助を行う「旅のプレゼント」といった取り組みを実施しています。
しかし、JR北海道労組を巡っては、革マル派の浸透疑惑以外にも、深刻な労使関係や組合運営に関する問題が多数指摘されており、これらの問題は国会でも議論される事態に至っています。これら組合の問題が、2010年以降JR北海道で相次いだ重大な事故や不祥事の原因の一つではないかと推測する見方もあります。例えば、2017年2月には当時の菅義偉内閣官房長官が読売新聞のインタビューで「北海道では過去に色んな事故が起きた。ああいう組合を持っているのはJR北海道だけでしょ」と発言し、組合問題と事故・不祥事との関連性を示唆しました。
深刻な労使癒着と経営への介入
JR北海道労組は、会社の経営や人事に強い影響力を行使しているとされています。組合の意向が人事や人選、各種施策に強く反映され、労組の同意なくして会社側が人事権や経営権を行使することが困難な状況にあると指摘されています。このため、JR北海道では1989年以降、労組にとって不都合な社員（他労組組合員や労組内の改革派など）に対する差別や報復と見られる人事が度々行われてきました。また、会社側が他労組との労働協約締結を拒否するといった事態も発生しており、これらの中には労働委員会や裁判所によって不当労働行為と認定された事例も少なくありません。過去には、735系電車の導入を巡る社内対立において、経営会議で決定された方針を組合が事実上覆したこともありました。
さらに、労組が団体交渉の際に、本来交渉窓口であるべき総務部ではなく、運輸部や車両部といった実務を担う「主管部」に直接要求を突き付けるといった行動が見られました。また、会社と一体となって、特にJR北労組などの他労組から組合員を引きはがす工作を行っていた事例も指摘されています。こうした労使間の極端な癒着ぶりは、JR北海道労組に浸透しているとされる革マル派からも批判されるほどでした。
JR北海道労組とJR北海道の間でこれほど深刻な労使癒着が生じた背景には、会社発足当初から経営問題を抱え、その安定化のための合理化を推進する上で、最大労組であるJR北海道労組の協力が不可欠だった会社側の事情と、他労組の存在を認めないというJR北海道労組の「平和共存否定」の方針が一致したこと、そして国鉄時代のような激しい労使・労労対立を避けたいという会社側の意図を労組が利用したことが挙げられています。
「平和共存否定」による他労組との対立
1998年頃からJR北海道労組は、「平和共存否定」を掲げ、他の労働組合に対して極めて攻撃的な姿勢を強めました。同時に、組合員に対して、他の組合に所属する社員との一切の交流を固く禁じる指導を行うようになりました。この交流禁止は、会社業務とは関係のない私的な場面にも及び、組合員の結婚式への他労組組合員の出席を断念させたり、組合の垣根を超えた親睦会を実力行使で解散に追い込んだりするなど、徹底した介入が行われたとされています。その結果、JR北海道の社内では、所属する組合が異なるだけで挨拶すら交わせないという異常な人間関係がまかり通る状態となり、これが2010年以降の事故や不祥事の一因となった可能性も指摘されています。
実際、2013年にはJR北労組などが安全確保のために「4労組（JR北海道労組、JR北労組、国労北海道、建交労北海道）共同行動」を呼びかけましたが、JR北海道労組はこの呼びかけを拒否した上、共同行動を提起したJR北労組側の行動を「組織破壊行為」として非難するという事態が発生しました。
アルコール検査拒否問題
JR北海道では2008年11月に乗務員へのアルコール検査制度を導入しましたが、JR他社が全ての乗務員に対して検査を義務付けていたのに対し、JR北海道では検査が任意とされていました。これは、札幌車掌所の若手組合員を発端とするJR北海道労組による強い抵抗があったためとされています。特に釧路運輸車両所では、JR北海道労組に所属する車掌のほぼ全員がアルコール検査を拒否するという異常な状況が発生しました。彼らの拒否理由として、「検査を受けるか受けないかは個人の自由」「前日に飲酒していなければ検査は不要」といった、安全よりも個人の都合を優先する極めて自己中心的な主張がなされました。この事態に対し、保安監査を実施した国土交通省鉄道局は異例の強い言葉でJR北海道労組の姿勢を批判しましたが、アルコール検査の義務化は結局2013年11月まで遅れることになりました。
非民主的な組合運営
JR北海道労組の運営においては、深刻な労使癒着や、結婚式への介入に見られるような「平和共存否定」方針に基づく組合員の私生活への干渉などにより、組合に対する不満を抱く組合員に対する排除行為が横行していると指摘されています。集団での恫喝や無視、さらには会社への圧力によって本人の希望しない部署への転勤を強いるといった行為が行われていたとされます。また、労働条件の改善よりも政治活動が優先され、国会議員の後援会への加入を強制したり、政治資金のカンパを強要したりといった事例も報告されています。さらに、JR北海道の給与水準はJR他社と比較して低く、国の問題提起を受けるほどであるにもかかわらず、組合費は基本給の2％（上限6,200円）に1,000円を加算した額が毎月徴収されており、組合費が高額過ぎるという批判も存在します。
改革派の連続死
JR北海道では、労組の影響力に批判的な改革派の社員が不審な死を遂げる事例が発生しています。2007年に社長に就任した中島尚俊氏は、当時の島田修専務（後に社長）と共に、労組との過度な癒着関係を是正すべく労政改革を推進し、労組の影響力を弱めることに一定の成果を上げました。しかし、2011年5月の石勝線特急列車脱線火災事故後、国土交通省から事業改善命令が出され、その対応に追われる中、同年7月1日にJR北海道労組は労政改革への不満を理由に会社との労使交渉を決裂させました。さらにその1週間後、札幌中央労働基準監督署の調査により、JR北海道本社の「計画部門」における三六協定違反が発覚しました。JR北海道労組はこの三六協定違反を口実に、会社側、特に労政改革を主導した中島社長と島田専務に対する激しい攻撃を開始しました。同時期には、JR北海道労組と関係の深かった会社幹部らが労組に協力して労政改革を頓挫させようとする動きも生じました。その結果、労政改革を事実上白紙に戻す内容の合意文書が会社と労組の間で交わされる事態となりました。労使双方から攻撃を受ける形となった中島社長は精神的に追い詰められ、自殺に追い込まれたとされています。また、島田専務は子会社へ転出させられました。
さらに、2018年1月には、JR北海道労組の内部改革を訴えていた男性社員が、釧路港の埠頭で遺体となって発見されました。この社員は労組中央本部青年部の事務長を務めるなど、次世代を担う優秀な人材として労組内でも期待されていました。しかし、2013年10月に「今は会社存亡の危機であり、組合の垣根を取り払って話し合うべき」と労組内部で発言し、改革を訴えたことが問題視されました。この発言が労組の「平和共存否定」方針に反するとされ、当時務めていたJR北海道労組札幌地方本部札幌運転所分会の書記長の地位を剥奪されます。その後も、彼を慕う若手組合員らと非公式の「勉強会」を開き、労組の内部改革に向けた活動を続けていましたが、2016年にこの勉強会の存在が労組側に露見しました。労組は、この社員を「組織破壊行為に及んだ」と非難し、同年6月の定期大会で「制裁」を検討する「統制委員会」を設置しました。1年間の調査・審議を経て、彼は「組織破壊者」と断定され、2017年6月の定期大会で「満場一致」の「除名」処分が決定され、組合から永久追放されました。その後、会社側もこの社員を畑違いの部署に左遷していました。
これらの問題は、JR北海道の安全運行に深刻な影響を与えている可能性が指摘されており、今後の動向が注視されています。
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