北海道犬

北海道犬（ほっかいどうけん）

北海道犬は、日本の北海道を原産とする中型の日本犬の一種です。古くはアイヌ民族の猟犬として活躍し、「アイヌ犬」とも呼ばれていました。1937年に天然記念物に指定され、その名が広く知られるようになりました。

歴史

起源

北海道犬のルーツは、縄文時代に東北地方から北海道へ渡った縄文人が伴ったマタギ犬（山岳狩猟犬）にあると考えられています。弥生時代には、渡来人が持ち込んだ犬と在来犬との混血が進みましたが、北海道は地理的な要因から渡来系の犬の影響が比較的少なかったとされています。

田名部雄一の研究では、琉球犬との類似性が指摘されています。また、台湾原住民が飼育する犬との共通点も指摘されており、興味深い点です。

しかし、遺跡から発見される縄文犬の骨と北海道犬の体格や骨格には類似性が見られず、ミトコンドリアDNAの解析でも異なる結果が出ていることから、鎌倉時代に本州から渡った獣猟犬が祖先であるという説も存在します。

呼称

アイヌ語では、犬は「セタ」や「シタ」と呼ばれ、地域によっては「火の神の庭にいつもいる神」や「庭にいつもいるもの」といった意味合いの言葉で呼ばれていました。また、死んだ犬は「レエㇷ゚（這うもの）」や「レエㇷ゚・カムイ」と呼ばれていた地域もあります。

1937年12月21日、文部省によって天然記念物に指定された際、「北海道犬」という正式名称が定められました。その後、管理は北海道庁、そして北海道教育委員会へと引き継がれています。

英語では「Hokkaido」と呼ばれています。

特徴

体格: 中型犬
耳: 三角形の小さな立ち耳
目: 目尻が吊り上がった三角形の小さな目
尾: 背中の上に巻いた巻き尾、または半円状の差し尾
被毛: 硬く長い毛と柔らかく短い毛の二重構造（ダブルコート）。赤、白、黒、虎、胡麻、狼灰などの毛色があります。
その他: 舌斑を持つ個体が多いのも特徴です。

性格・性質

北海道犬は、飼い主に非常に忠実で、勇敢かつ大胆な性格です。野性味が強く、我慢強く、粗食にも耐え、寒さにも強いという特徴があります。

体高: オス47 - 55 cm、メス44 - 52 cm
体重: 15 - 20 kg
寿命: 12 - 15年

その他

厚真犬

北海道犬には産地による系統があり、虎毛模様の犬は「厚真系」と呼ばれています。胆振管内厚真町では「厚真犬」が町の獣として定められており、厚真郵便局の風景印にもその姿が描かれています。「厚真虎毛」とも呼ばれ、生後1年以内の子犬を購入した場合には、町役場から畜犬登録や狂犬病予防注射の費用補助が受けられます。

展覧会

北海道犬のドッグショーは「展覧会」と呼ばれます。審査員が犬のスタンダード（理想的な形態）にどれだけ近いかを評価し、順位を決定します。ハンドラーの運動量も要求される点が特徴です。

獣猟競技会

一部の保存団体では、ドッグショーに合わせて獣猟競技会が開催されます。これは、檻に入れたクマに犬をけしかけ、猟犬としての能力を競うという、他犬種では珍しい競技です。

海外での普及状況

柴犬や秋田犬ほど一般的ではありませんが、ドイツなど海外でも繁殖が行われています。

避難者の捜索

1902年の八甲田雪中行軍遭難事件では、遭難者の捜索に北海道犬が活躍しました。

阿久号

阿久号は、現在の北海道犬の主流である千歳系の基礎となった犬として知られています。

情報媒体への露出

SoftBankのCM「ホワイト家族」のお父さん役として、北海道犬が出演し、人気を博しています。

脚注

参考文献

渡辺洪『北海道犬の話』北海道出版企画センター、1983年
土屋良雄『北海道犬のはなし』北海道新聞社、1989年、ISBN 4-89363-522-0
愛犬の友編集部編『北海道犬』誠文堂新光社、1990年、ISBN 4-416-59007-5
佐草一優『人気犬種166カタログ』グラスウインド、2004年、ISBN 4-434-05637-9
Shi-Ba編集部編「北海道犬物語」『Shi-Ba』2003年1月号、辰巳出版、2003年

関連項目

犬の品種一覧
樺太犬
天然記念物北海道犬保存会

外部リンク

天然記念物北海道犬協会
* 天然記念物北海道犬保存会

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