樺太犬

樺太犬の魅力と歴史

樺太犬（からふとけん）は、樺太（サハリン）や千島列島で開発された中型から大型の犬種です。この犬種は、古くから北方民族であるアイヌやニヴフによって犬ぞりや猟犬として重宝されてきました。特に樺太犬は、オホーツク文化の遺跡から発見された古代の骨によって原型が示されるなど、その歴史は非常に古いことが分かります。ジャンルによって「カラフト犬」とも呼ばれており、地方ごとの愛称が存在することでも知られています。

日本での樺太犬の役割

日本では、南樺太が日本の領土となった日露戦争後、樺太犬は主に使役犬として導入され、北海道での個体数が増加しました。特に1910年から1912年にかけて、白瀬矗の南極探検隊に伴われ、犬ぞり用の犬として大いに活躍しました。戦後も南極地域観測隊による第一次越冬隊での利用が記憶に残ります。この時期には犬ぞりによって物資輸送が行われ、犬たちの能力が発揮されました。

北海道では、1960年代まで樺太犬は漁業や木材の運搬、さらには電報配達や行商まで幅広く利用されていました。しかし、車や機械の普及によってその役割は徐々に減少し、樺太犬は使役犬としての需要がなくなりました。

絶滅の危機

樺太犬が脚光を浴びたのもつかの間、1970年代にはその数が激減しました。使役犬としての需要がなくなると、他の犬種との混交が進み、純血の樺太犬は徐々に姿を消してしまいました。また、当時、エキノコックス症の流行なども影響し，野に放たれた犬たちは掃討され、多くの犬が命を落とす結果となりました。ロシアにおいても1930年代から大規模な殺処分が行われたため、日露双方で樺太犬の純血は絶滅状態にあります。

樺太犬の特徴

樺太犬の外見的特徴には、次のような点があります。大きさは中型から大型、体長は64〜76cm、体高は54〜67cm、体重は22〜45kg程度です。その性格は従順で、融和性があり、忍耐強く、勇敢です。また、非常に忠実で優れた方位感覚を持ち、帰る能力にも優れています。

毛質は密毛で、長毛種と短毛種が存在します。北海道では長毛種が多く見られ、毛色は黒、白黒ブチ、狼灰色、茶、薄茶、白などが見られます。耳は立ち耳が主流ですが、たれ耳の個体もいます。さらに、耐寒性に優れた体形は、厳しい環境で生き抜くための特性を持ち合わせています。

タロとジロの物語

樺太犬の中で最も有名な存在は、タロとジロです。1957年に南極地域観測隊に参加した22頭の犬の中から選ばれた2頭で、主に物資輸送のために派遣されました。彼らは、悲しい運命に遭遇します。第二次越冬の際、隊員たちと共に引き上げられず、1か月分の食料を与えられただけで置き去りにされました。

しかし、1年後、第三次越冬隊が昭和基地に戻った際、タロとジロは驚くべきことに生き延びていたのです。彼らはその後も第三次越冬隊に加わり、任務を果たしました。このエピソードは後に映画『南極物語』でも劇化され、多くの人々の心を打ちました。タロの剥製は北海道大学に、ジロの剥製は東京の国立科学博物館に展示されています。

結論

樺太犬は、その忠誠心や耐寒性、優れた運動能力から、極地探検や厳しい環境での犬種として重要な役割を果たしてきました。彼らの物語や特性は、今も多くの人々に親しまれ、知識の源として受け継がれています。

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