北牧野製鉄遺跡

北牧野製鉄遺跡について

北牧野製鉄遺跡は、滋賀県高島市マキノ町牧野に位置し、県内でも特に注目される製鉄の遺跡です。その起源は奈良時代に遡り、文献にも記載がある重要な場所です。特に『続日本紀』の天平宝字6年（762年）には、当時の権力者藤原恵美押勝が近江国の鉄穴を授けられたことが記されています。この記録から、高島地域が鉄の生産に深く関与していたことが分かります。

古代の製鉄所

遺跡は、マキノ高原やスキー場周辺に広がる北牧野A・B・C・D・E遺跡と呼ばれる複数の製鉄所跡で構成されています。1968年には同志社大学の考古学研究室による発掘調査が実施され、鉄滓や製鉄関連の遺物と共に、須恵器や土師器片が出土しました。これにより、製鉄所が8世紀頃に稼働していたことが確認されました。

また、発見された鉄滓に含まれるチタンの量から、原材料は砂鉄ではなく鉄鉱石であると推測されています。具体的には、北牧野製鉄遺跡の南西に位置する大谷山地域の古生層に接した部分で鉄鉱石が採掘されていたと考えられています。さらに、今津町にある他の製鉄遺跡とも関連性があり、全体として高島地域の古代の鉄生産の盛況を示しています。

製鉄の操業年代

高島市マキノ町内には、北牧野製鉄遺跡群以外にも多くの製鉄遺跡が存在します。中には海津天神社裏山のA遺跡や小荒路遺跡、大谷川遺跡があり、これらは古代の鉄生産を理解するための重要な手がかりを提供しています。特に北牧野A遺跡からは、須恵器が出土し、この遺跡が8世紀代の操業期を持つことが確認されています。一方で、他の遺跡については、操業時期の確証が得られていないものも多いです。

文献記録には、滋賀県内での製鉄の歴史が7世紀後半から8世紀にかけて行われていたことが記されており、最近の発掘調査によってもこの点が裏付けられています。高島市内の製鉄遺跡の操業時期は、このわずか数世紀に当たるため、より古い時期への遡及も期待されています。特に、古墳群との関係性もあり、古墳時代後期の製鉄の可能性も指摘されています。

渡来系技術者の存在

製鉄技術の背後には、渡来系の技術者の影響があります。『続日本紀』には漢人系の鍛冶技術者の存在が示されており、これが製鉄技術の発展に寄与したと考えられています。滋賀県マキノ町上開田の薬師如来の奥書に記された内容からも、漢人系の技術者が長期的に定住し、技術の伝承を行っていたことが伺えます。彼らの存在は、製鉄業の発展を加速させる大きな要因となったと言えるでしょう。

まとめ

北牧野製鉄遺跡は、古代高島における鉄生産の重要な拠点として、次のような特徴を持っています：

• - 古墳時代後期から鉄生産が始まった可能性がある。
• - 奈良時代には活発な鉄生産が行われていた。
• - 原料として使用されていたのは主に鉄鉱石である。
• - 文献資料において高島郡の鉄生産が記録されている。
• - 有力者の藤原仲麻呂が製鉄に関与していた。
• - 複数の製鉄遺跡が確認されている。
• - 渡来系の製鉄技術者の存在が確認されている。

これらの要素が組み合わさり、北牧野製鉄遺跡は地域の歴史や文化を理解する上で不可欠なスポットとなっています。

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