北畠典生

北畠 典生

（きたばたけ てんせい）

日本の仏教学者。1928年、北海道留萌市の永福寺に生まれ、2024年12月25日に96歳でその生涯を閉じた。龍谷大学および岐阜聖徳学園大学の名誉教授・元学長であり、文学博士号を持つ。また、浄土真宗本願寺派においては勧学の最高位に昇り、善行寺（山形県天童市）の住職も務めた。仏教学の研究と教育に長年携わり、特に日本仏教や唯識思想の研究において顕著な功績を残した。

生涯と経歴

北畠典生は、郷里の永福寺で仏縁に触れながら育ち、仏道を志した。龍谷大学に進学し、旧制の研究科仏教学専攻を1955年に卒業。同年、同大学の助手に着任し、仏教学者としての道を歩み始めた。その後、講師、助教授を経て、1970年には教授に昇任した。

龍谷大学においては、研究・教育だけでなく、大学運営にも深く関与した。学生部長、短期大学部部長、一般教育部部長、宗教部部長といった要職を歴任し、幅広い部門で指導力を発揮した。1989年から1993年まで文学部部長を務めた後、1995年には同大学の学長に就任し、1999年までその任にあたった。

龍谷大学を退いた後も、仏教教育への情熱は衰えることなく、1999年から2005年まで岐阜聖徳学園大学の学長を務めた。教育機関のトップとして、仏教精神に基づいた人材育成に尽力した。

宗門においても重要な役割を果たした。2001年から2005年まで浄土真宗本願寺派の監正局長を務め、宗派の規律維持と発展に貢献。さらに2012年には、宗派の最高執行機関である本願寺執行長に就任し、宗派全体の運営に関わる重責を担った。

国内外の様々な教育機関で教鞭を執り、次世代の仏教学者や宗教者を育成した。東京仏教学院、中央仏教学院、天理大学、京都女子大学、大谷大学大学院で非常勤講師を務めたほか、アメリカのバァークレーIBS（米国仏教大学院）や韓国の東国大学校仏教大学院では客員教授として招かれ、国際的な交流にも貢献した。

また、仏教学および関連分野の振興にも積極的に関与し、複数の財団や学会で要職を務めた。山内慶華財団、仏教学術振興会、真宗保育学会、仏教教育学会などで理事や理事長を歴任し、研究支援や教育実践の発展に寄与した。

研究と業績

北畠典生の研究は多岐にわたるが、特に日本中世における唯識思想の研究は重要な業績の一つである。この分野に関する複数の著書や論文を発表し、学界に新たな視点を提供した。また、浄土真宗の教義や歴史に関する研究も深め、教学の発展に貢献した。

主な著書には、『日本中世の唯識思想』、『『観念発心肝要集』の研究』、『往生要集綱要』などがあり、専門研究者向けの著作から、一般向けの仏教入門書まで幅広く執筆した。『豊かに生きる-21世紀へのメッセージ』のような人生論的な著作もあり、仏教の智慧を現代社会に活かす試みも行った。また、多くの共著や論文集にも寄稿し、研究成果を広く共有した。

彼の研究活動は、専門データベースCiNiiやINBUDSなどでも多数の論文が確認できる。

影響と貢献

北畠典生は、長年の教育活動を通じて多くの門下生を育成し、仏教学界に多大な影響を与えた。また、龍谷大学や岐阜聖徳学園大学の学長として、教育体制の整備や大学の発展に尽力した功績は大きい。浄土真宗本願寺派の要職を歴任したことは、宗派の教学や運営における彼の識見が広く認められていたことを示している。

仏教学者、教育者、宗教者という多角的な立場から、仏教の教えを現代社会に伝え、その精神に基づいた社会の実現に貢献した。2024年の逝去は、仏教学界および浄土真宗本願寺派にとって大きな損失となったが、彼の研究成果と教育者としての功績は長く記憶されるだろう。

参考文献は、主に北畠典生自身の著書等に付された略歴などが参照されている。

（参照：龍谷大学ウェブサイト、CiNii、INBUDS 等）

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