北部サーミ語

北部サーミ語は、ラップランド地方で話されているサーミ諸語の一つです。サーミ諸語の中でも話者人口が多く、比較的早くから独自の表記体系が確立された言語として知られています。

表記法の歴史

北部サーミ語の表記法の歴史は、1887年にイェンス・フリースによって編纂された『ラップ語辞典』に端を発します。この辞典は東フィンマルク方言に基づいて編纂され、当時の北部サーミ語の表記法の基礎となりました。その後、コンラード・ニールセンが1926年から1929年にかけて執筆した『ラップ語教本』では、フリースの表記法をより学術的な転写に適応させた表記法が用いられました。

しかし、これらの初期の表記法は、実用面では不便なものでした。ノルウェーやスウェーデンでは、実用性を重視した表記法が用いられるようになった一方、フィンランドでは音声面での忠実さを重視した表記法が用いられるなど、表記法には地域差が生じました。このため、統一された表記法が存在しない状況が長く続きました。

状況を変える転機となったのが、1971年のサーミ語委員会の結成です。この委員会は、長年の表記法の混乱を解消するため、新たな統一表記法の制定に取り組みました。そして、1979年には、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの三国でこの新しい表記法が正式に採用され、北部サーミ語の表記法はようやく統一されたのです。

音韻

北部サーミ語の音韻体系の特徴の一つに、子音の階梯交替が挙げられます。これは、語根や語形変化によって、子音が異なる音に変化する現象です。この現象は、北部サーミ語の文法や語彙を理解する上で重要な要素となっています。子音の変化パターンは複雑で、詳細な研究が求められます。

言語としての北部サーミ語

北部サーミ語は、長い歴史と独自の文化的背景を持つ言語です。その歴史の中で、様々な表記法の変遷を経て、現在では統一された表記法が確立されています。しかし、依然として、話者人口の減少や他の言語との接触による影響など、様々な課題に直面しています。

言語の維持・発展のためには、教育、メディア、地域社会の様々なレベルでの取り組みが不可欠です。北部サーミ語の現状と課題を理解し、その保護と発展に貢献していくことが重要です。

参考文献

小泉保著『ラップ語入門』（大学書林、ISBN 4-475-01802-1）

関連事項

サーミ人
ラップランド
[エスノローグ]] (Ethnologue): [Ethnologue report for language code sme
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