北部ナイジェリア保護領

北部ナイジェリア保護領：イギリス植民地支配の歴史

北部ナイジェリア保護領は、現在のナイジェリア北部に位置し、かつて存在したイギリスの保護領です。1900年にイギリス政府によってその成立が宣言され、1914年に南部ナイジェリア保護領と合併し、イギリス保護領ナイジェリアとなりました。

北部ナイジェリア保護領の成立

1900年1月1日、イギリス政府は北部ナイジェリア保護領の成立を宣言し、フレデリック・ルガード卿が初代高等弁務官に任命されました。ルガードは、当時北部ナイジェリアに存在していたソコト帝国を占領し、ソコト帝国で行われていた伝統的な支配体制を利用した間接統治を導入しました。

背景：ソコト帝国の存在

19世紀の北部ナイジェリアには、ソコト帝国が存在していました。ソコト帝国はスルターンを頂点とし、各地にエミールを配置するスルターン＝エミール体制を確立していました。1880年までには、ソコト帝国は北部ナイジェリアのほぼ全域と、ミドルベルトと呼ばれるニジェール川・ベヌエ川低地を支配していました。

商社の進出と王立ニジェール会社

イギリスによる北部ナイジェリアへの進出は、ニジェール川の流路や西アフリカ内陸の都市との通商を求めて派遣された探検家たちによって始まりました。探検によってニジェール川の様子が明らかになると、商社の進出が加速しました。1879年には、ジョージ・トーブマン・ゴールディによってユナイテッド・アフリカ会社が設立され、その後ナショナル・アフリカ会社に改組されました。

1886年、イギリス政府はナショナル・アフリカ会社に特許状を与え、ニジェール川河岸部の領域の支配を任せました。これにより、私企業でありながら統治権や徴税権、裁判権を持つ特許会社である王立ニジェール会社が誕生しました。しかし、王立ニジェール会社は北部ナイジェリアのほとんどを実効支配することができず、1899年12月31日をもって特許状は廃止され、政府による直接的な支配が行われることとなりました。

間接統治の始まり

ルガードは、広大な北部ナイジェリアを限られた人員と予算で統治するため、ソコト帝国の既存の支配体制を利用して植民地支配を行う間接統治を行うことを決定しました。彼はスルターンとエミールの新任を行い、イギリス政府に対して忠誠を誓わせることで、支配体制を確立しました。

南部との合併とその後

北部ナイジェリア保護領は財政基盤が脆弱であり、南北保護領の歳入の隔たりは大きかったため、南北の財政基盤の隔たりは保護領政府の間で軋轢を生みました。1914年1月1日、北部ナイジェリア保護領は南部ナイジェリア保護領と合併し、北部州としてナイジェリア保護領の一部となりました。この合併により、現在のナイジェリア連邦共和国の基礎が築かれました。

政府と統治機構

北部ナイジェリア保護領の最高位の官職は高等弁務官であり、後に総督に改名されました。立法機関は存在せず、高等弁務官や総督が発出する布告が法令とされました。ルガードは間接統治を採用し、既存のソコト帝国の体制を利用して統治を行いました。イギリス側は伝統的な首長の権威を認めましたが、武器や軍隊の所有は認められず、徴税権や立法権はイギリス側にありました。

司法制度

1900年には「1900年保護領裁判所布告」が発布され、最高裁判所やプロヴィンス裁判所が設置されました。同年には「1900年原住民裁判所布告」が発布され、北部ナイジェリアの伝統的な司法の仕組みを取り込んだ原住民裁判所が設置されました。1906年には「1906年原住民裁判所布告」が発布され、原住民裁判所はアルカーリー裁判所と司法評議会の2つに分類されました。

財政と税制

北部ナイジェリア保護領の財政基盤は、農民や牧畜民から徴収した税収と、南部からの資金移転、イギリス本国からの資金援助で成り立っていました。税は郡の長が住民から徴収し、原住民金庫に納められました。1903年の税制改革ではキャラバン隊に対する通行税が新設されましたが、税収が増えなかったため1907年には廃止されました。

社会と宗教

ルガードはソコトを征服した際、イギリスの統治機構はイスラームに干渉せず、キリスト教への改宗を強制しないと宣言しました。キリスト教の宣教師はムスリムの居住地での布教を制限されましたが、エミールがキリスト教の宣教師を招聘することは許可されており、西洋式の教育を求めた多くのエミールが宣教師を招聘しました。

北部ナイジェリア保護領は、その成立から合併、統治機構、社会まで、複雑な歴史的背景を持つ地域でした。その歴史は、現代のナイジェリアにも大きな影響を与えています。

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