北関東大久保一家

概要

大久保一家（おおくぼいっか）は、群馬県高崎市に本拠地を置く博徒系の暴力団です。指定暴力団である松葉会の二次団体として位置づけられています。

この組織は、上州における博徒の草分け的存在とされる田中代八によって立ち上げられた、極めて長い歴史を持つ組織です。暴力団研究家の山平重樹氏の著作によれば、日本国内に現存する組織の中でも、最も古い系統を持つ一つであるとされています。その起源は江戸時代に遡り、地域社会において大きな影響力を持ってきました。

沿革

大久保一家の歴史は、江戸時代の天明年間（1781年～1789年）に、上州駒寄村大久保（現在の群馬県渋川市付近）で生まれた初代・田中代八が、「北関東大久保一家」として組織を興したことに始まります。田中代八の下では、後に著名な侠客となる大前田英五郎の父・大前田久五郎や、生井一家の初代として知られる生井弥兵衛といった人物が貸元を務めるなど、初期から有力者を輩出していました。

しかし、1784年（天明4年）3月28日、当時の幕府による大々的な博徒取り締まりによって、初代・田中代八は捕縛され、獄死したと伝えられています。その跡を継いだのは、金谷秀蔵で、彼は北関東大久保一家の二代目総長となりました。

組織は一時期衰退も見られましたが、幕末の頃に六代目・中島栄作が登場し、その手腕によって再建を果たします。中島栄作は、組織の縄張りを北群馬郡吉岡町（現在の群馬県吉岡町）まで広げるなど、勢力の拡大に努めました。

1881年（明治14年）4月18日に中島栄作が死去した後、七代目として中島常吉が組織を継承しました。

時代は下り、1969年（昭和44年）1月には、当時松葉会の中核を担っていた関根組（後の松葉会）の元組長・関根賢が、松葉会群馬県支部長を務めていた牧野春夫（後に名を牧野国泰と改め、松葉会五代目会長となる。本名：李 春星）を自身の自宅に招きました。この席で関根賢は、牧野春夫に対し、自身の兄弟分であった北関東大久保一家九代目・中島豊吉（通称：魚トヨ）の後継者として、十代目総長を継承するよう強く勧めました。

この勧めを受け入れ、1970年（昭和45年）、牧野国泰は中島豊吉から北関東大久保一家の十代目を正式に継承します。

1993年（平成5年）12月には、牧野国泰が松葉会の五代目会長に就任しました。この際、北関東大久保一家の総長代行を務めていた荻野義朗が、牧野国泰から引き継ぐ形で、北関東大久保一家の十一代目総長となりました。荻野義朗も後に松葉会の六代目会長を務めることになります。

その後、2013年（平成25年）には小池清一が十二代目総長を継承。さらに、2024年（令和6年）には三上昌一が十三代目総長を継承し、現在に至っています。

系譜

初代 - 田中 代八
二代目 - 金谷 秀蔵
三代目 - 金谷 円蔵
四代目 - 金谷 粂蔵
五代目 - 金谷 九兵衛
六代目 - 中島 栄作
七代目 - 中島 常吉
八代目 - 中島 安五郎
九代目 - 中島 豊吉
十代目 - 牧野 国泰（松葉会五代目会長、本名：李 春星）
十一代目 - 荻野 義朗（松葉会六代目会長）
十二代目 - 小池 清一
十三代目 - 三上 昌一

参考文献

* 山平重樹『義侠ヤクザ伝・藤田卯一郎』幻冬舎＜アウトロー文庫＞、2003年、ISBN 4-344-40476-9（P.263～P.265を参照）

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