北陸トンネル火災事故

北陸トンネル火災事故の概要

北陸トンネル火災事故は、1972年11月6日午前1時過ぎに福井県敦賀市の北陸トンネルで発生した列車火災事故です。この事故は、日本国有鉄道（国鉄）が運行していた急行「きたぐに号」がトンネル内で火災に見舞われ、多くの乗客が犠牲となる惨事を引き起こしました。

事故の経過

火災は、急行「きたぐに号」の食堂車の喫煙室から発生しました。事故発生時、列車は北陸トンネルを走行しており、約760人の乗客と乗員が乗車していました。火災に気づいた乗客から通報を受け、列車はすぐに緊急停止しました。その後、乗務員によって消火作業が行われましたが、消火器の効果はほとんど見られず、火勢は次第に強まっていきました。

火災車両の切り離し作業が試みられましたが、作業には時間がかかり、結果的にトンネル内での自力脱出は不可能となりました。そのため、乗客は煙に包まれた暗闇の中で救助を待つか、徒歩での避難を余儀なくされました。一部の乗客は救援列車により救出されましたが、国鉄や消防の救助活動は、猛煙に阻まれて困難を極めました。

救助活動と帰結

火災は発生から約8時間半後に自然鎮火し、全ての乗客と乗員の救出には約10時間半の時間がかかりました。最終的に、30人が死亡し、714人が負傷するという重大な人的被害が発生しました。死亡者の多くは一酸化炭素中毒によるものであり、事故後には乗客の中から1人が置き去りにされていたことが発覚し、国鉄の対応への非難が高まりました。

原因と責任

火災の原因は、食堂車の喫煙室に設置された電気暖房器具とその配線の接続不良による異常過熱でした。この電気暖房器は、設置時に適切な固定が行われておらず、振動によって接続部が緩み、漏電を引き起こした結果、火災が発生したとされます。この事故について、国鉄や金沢鉄道管理局は事前の火災対策が不十分だったとの指摘を受け、後に対策の強化が求められることとなりました。

事故後の改善策

この火災事故を受けて、日本国内の鉄道において火災対策が見直されました。具体的には、車両の構造や使用される材料の難燃化、安全管理体制の強化、災害時の避難方法の見直しが進められました。特に長大トンネルにおいては、従来の運転マニュアルが改訂され、トンネル内での火災発生時には直ちに停止せず、貫通扉を閉じたまま轟走することが推奨されるようになりました。

教訓とその後

北陸トンネル火災事故は、日本の鉄道史における重要な教訓を提供しました。その結果、火災対策が強化されるとともに、火災発生時の緊急対応が大幅に改善されました。事故に関する詳しい調査結果や原因究明により、鉄道の安全性向上に寄与することが目指されています。この事故は、今後の鉄道運行において安全対策の重要性を再認識させるものでした。

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