区バス (新潟市)

新潟市の地域公共交通：区バスと住民バス

新潟市では、2007年（平成19年）4月1日の政令指定都市への移行を契機に、各行政区内における地域交通の維持・確保を目的としたコミュニティバス「区バス」の運行が本格的に開始されました。中央区を除く市内7区で導入された区バスは、市が事業の主体となり、各行政区が運行実務を担当し、新潟交通グループをはじめとする市内の民間バス事業者に委託する形で運営されています。本稿では、この区バスに加え、市民グループなどが主体となって運行する「住民バス」についても触れ、新潟市の地域交通における多様な取り組みを紹介します。

各区の区バスの展開

区バスは、主に既存の路線バス網ではカバーしきれない郊外部や、公共交通空白地域における市民の移動手段を確保するために導入されました。以下に、主要な区の区バスの取り組みを詳述します。

北区区バス

北区では、政令市移行に先立つ2007年（平成19年）3月20日から区バスの運行が始まりました。区内を南北に結ぶ公共交通が不足していたため、白新線の主要駅と区北部の地域を結ぶ路線や、豊栄駅から福島潟への路線などが開設されました。当初3路線でスタートしましたが、利用者低迷によりビュー福島潟ルートは同年12月に廃止となりました。他の2路線（太郎代浜ルート、陽光ニュータウンルート）も収支率が市の継続目安を下回る状況が続きました。現在は東港タクシー株式会社が運行を受託しています。

東区区バス

東区では、2007年 4月2日に区役所と石山出張所を結ぶ2ルートで区バス運行を開始しました。これは、区内東西の移動は容易な一方、区役所のある北部（山の下地区）と南部（石山地区）を結ぶ交通手段が不足していたためです。当初、1便あたりの平均利用者が少なく、利用者からの改善要望も寄せられたため、2008年 4月1日に運行経路を大幅に見直し、現在の河渡ルートと松崎ルートに再編されました。通勤・通学時間帯に対応したダイヤ設定や、増便なども行われ、利用促進が図られています。現在は新潟交通観光バス株式会社が運行を受託し、高齢者向けの運賃減免制度も導入されています。

西区区バス

西区でも東区と同じ2007年 4月2日から区バスの運行が始まりました。区の南北移動の課題（特に黒埼地区と坂井輪地区）や、公共交通が廃止された中野小屋地区への対応が目的でした。当初の中野小屋ルートは既存路線の延伸という形で、黒埼ルートは新路線として開設されました。しかし、黒埼ルートは利用が伸び悩み、2010年3月末に廃止されています。一方、坂井輪地区北部でも公共交通の課題がありましたが、地域住民の積極的な活動により「坂井輪コミュニティバス（Qバス）」がNPO法人によって2008年4月に運行を開始。これが2019年3月に区バスへ統合されました。現在は新潟交通観光バス株式会社が運行を受託しています。

秋葉区区バス

秋葉区は、政令市移行前の2007年1月20日から区バスを運行しており、これは市内でも比較的早い導入例です。自家用車に依存しない市民の移動手段確保を目指し、社会実験を経て事業化されました。新津駅を起点とする循環路線で、区役所や商業施設、美術館、温泉施設などを巡るルート設定が特徴です。運賃は対キロ制ですが、上限を設ける割引制度も導入されました。運行実績は他の区に比べて比較的良好で、観光・文化施設への乗り入れなどが利用促進に繋がっていると分析されています。運行受託は泉観光バスが行っています（運行開始当初は新潟交通観光バス）。

西蒲区区バス

西蒲区でも、政令市移行前の2007年 3月26日から区バス運行が始まりました。巻駅を中心に、公共交通が脆弱だった中之口地区南部を結ぶ中之口ルートからスタートしました。このルートは社会実験を経て事業化され、対キロ運賃が採用されています。また、区内他の交通空白地域においても社会実験が行われましたが、残念ながら正式運行には至らなかったケースもあります。現在は新潟交通観光バス株式会社が運行を受託しています。

南区および江南区でも区バスが運行されていますが、本稿では詳細な記述は割愛します。

区バス以外のコミュニティバス：住民バス

新潟市では、区バスの他に地域住民が主体となって運行する「住民バス」も存在します。これは、既存の路線バス廃止に伴う代替交通や、区バスではカバーしきれない狭域な地域内の移動手段として重要な役割を果たしています。

例えば、中央区では区バスは運行されていませんが、新潟島の北部（下町）において住民団体が主体となった「にこにこ号」が2007年7月から運行されています。高齢化が進む地域において、路線バス停から離れた狭隘なエリアの交通利便性向上に貢献しています。市の補助金と住民の出資、運賃収入で運営され、新潟交通に運行が委託されています。

その他、北区の「おらってのバス」や、西区の「コミュニティ佐潟バス」「内野上新町バス」（これらは路線バスの廃止代替として住民組織が運行）、江南区の「カナリア号」「横バス」など、各地域の実情に応じた様々な形態の住民バスが運行されており、地域住民の生活を支える重要な交通手段となっています。

このように、新潟市では、市が主導する区バスと、地域住民が主体となる住民バスという二本立ての地域交通システムを構築し、既存の路線バス網を補完しながら、市民の移動手段の確保と地域社会の維持・活性化に資する取り組みを進めています。これらのバスは、高齢者をはじめとする交通弱者の移動支援、通院・買い物といった日常生活の支援、さらには地域内の交流促進など、多岐にわたる役割を担っています。

もう一度検索