区議会 (香港)

香港の区議会は、1982年に設立された地方議会であり、香港の各区における住民の意見を政府に伝える役割を担っています。2019年現在、18の区に区議会が設置され、総議席数は452議席（当然議員を含めると479議席）です。議員の任期は4年となっています。

当初は「District Board」という名称でしたが、1999年末の市政局と区域市政局の廃止に伴い、現在の「District Council」に改称されました。

性格と権限

区議会は、予算の承認や条例の制定といった立法権限を持たない諮問機関です。そのため、行政に対する影響力は限定的で、公共施設やサービスの運営、都市計画などに関する意見を政府に陳述する役割に留まっています。

区は自治体や地方政府ではなく、区議会の設置に合わせて区分された行政区画です。香港政府は区の分割や合併を行うことができます。各区には民政事務処という行政組織が対応しており、民政事務局が管轄する民政事務総署の出先機関として機能しています。民政事務処のトップである民政事務専員が地区運営委員会を主催し、区議会の正副主席もメンバーとして参加し、政府と区議会の意見交換が行われます。

近年では、区議会の権限強化に向けた動きも出てきています。2005年には、当時の行政長官が図書館やコミュニティーホールなどの管理権限を区議会に移譲する方針を表明しました。また、2005年に香港政府が提示した政治制度改革では、選挙委員会の定員が大幅に増加し、その多くを区議会議員が占めることになりました。これにより、区議会が香港の政治に与える影響が大きくなる可能性も指摘されています。

議員の選出方法

区議会の設立と同時に21歳以上の香港市民に選挙権が付与され、区議会議員選挙が実施されました。民選議員は小選挙区制で選出されます。かつては中選挙区制も採用されていました。

議員には、選挙で選出される民選議員の他に、委任（任命）議員や当然（兼職）議員も存在します。委任議員は一時廃止されましたが、返還後に復活し、2016年には廃止されました。当然議員は、新界原住民の議会組織である郷事委員会が選出した代表です。

区議会は立法会に比べると民選議員の割合が高く、住民との距離が近いのが特徴です。選挙区は1万7千人を基準人口として設置され、区議会議員は身近な生活問題を争点としやすく、政治的イデオロギーよりも生活に密着した課題が重視される傾向があります。

選挙の投票率は、立法会選挙よりも低い傾向にありますが、2019年の区議会議員選挙では、香港民主化デモの影響で投票率が71.23%と過去最高を記録しました。

区域分布

区議会は、以下の各区に設置されています。

中西区
湾仔区
東区
南区
油尖旺区
深水埗区
九龍城区
黄大仙区
観塘区
葵青区
荃湾区
屯門区
元朗区
北区
大埔区
西貢区
沙田区
離島区

過去の選挙

区議会議員選挙は、過去に以下の日程で行われました。

1999年香港区議会議員選挙：民主派と左派の勢力が拮抗
2003年香港区議会議員選挙：香港基本法23条に基づく治安条例制定の動きが有権者の反感を買い、民主派が圧勝
2007年香港区議会議員選挙：親中派である民主建港協進連盟が議席を伸ばし、民主派が敗北
2011年香港区議会議員選挙：親中派である民主建港協進連盟が伸長し、民主派が敗北
2015年香港区議会議員選挙：親中派と民主派の議席数は大きく変化せず、民主派の議席数は少し増え、雨傘運動の影響で「傘兵」も当選
2019年香港区議会議員選挙：香港民主化デモの影響で民主派が4分の3以上の議席を獲得し、18区のうち17区で過半数を占めた

関連項目

立法会：かつて区議会議員から立法会議員を選出していた。
市政局：かつて存在した地方自治組織。
区域市政局：かつて存在した地方自治組織。
選挙委員会：行政長官を選出する組織。かつて区議会議員が選挙委員を務めていた。

脚注

区議会は香港の地方政治において重要な役割を果たしています。選挙制度や過去の選挙結果を理解することで、香港の政治動向をより深く理解することができます。

外部リンク

香港区議会
區議會角色、職能及組成的檢討
* 民政事務總署

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