医官

医官（いかん）についての詳細

医官とは、医師の資格を持つ陸・海・空自衛隊の幹部自衛官を指し、一般的な軍の軍医に相当します。なお、歯科医師は「医官」ではなく、異なる制度の「歯科医官」となります。

採用制度

令和5年3月末の時点で、陸上自衛隊の医官定数は779名、海上自衛隊225名、航空自衛隊172名となっています。自衛隊で医官として働くためには、防衛省管轄の防衛医科大学校を卒業するか、医師免許保持者が防衛省の公募試験に合格することが求められます。防衛医大の卒業生は、卒業と同時に陸・海・空の幹部候補生としての身分が与えられ、「曹長」のランクからキャリアがスタートします。

幹部候補生学校では基本的な教育が施されますが、医官はあくまで医師としての職務が重視され、体力関連の訓練は他の幹部自衛官と比べて軽視されます。公募で採用された医官や歯科医官は、実務経験に応じた階級で任命され、最初に「2佐」に任命される場合もあります。

医官としての勤務

医官は幹部候補生学校を卒業後、二等陸・海・空尉に任官され、研修医官としての道を歩みます。旧軍と同様に、医科大学卒の医官は特別な技能を有するため、他の兵科将校からは区別されています。近年、自衛隊では防衛医大及び自衛隊中央病院での2年間のカリキュラムに基づいて研修を行っており、他大学卒の医師による初期研修は適用外です。研修生のマッチングは行われず、研修の内容は厚生労働省が定めるものに沿って進められます。

初任実務研修を終えた後は、それぞれの部隊に配属され、通常は陸上自衛隊の衛生部隊、海上自衛隊、航空自衛隊に振り分けられます。その後、特定の教育課程を受けることで専門知識が強化され、専門研修医官としての責任を担うことになります。

専修医としての研修を終えた後は衛生学校での上級課程への入校を目指し、さらなる専門知識を修得することが期待されます。ただし、専門医になるための学位取得は難しく、研究科に進むことで博士（医学）の学位が得られる道もあります。

人事管理と医官の状況

防衛医科大学校を卒業した医官は自衛隊での勤務が義務されていますが、9年以内の退職には教育費用の償還が求められます。しかし、医官の多くが臨床経験の不足に悩み、約3分の1が9年を待たずに退職する実状があります。自衛隊の高級職における医官の割合はわずか6.7％であり、昇進機会は限られています。このため、医官の離職率が高まる原因となっています。

医官になることで、自衛隊の中で女性が比較的進出しやすい環境も存在しますが、医師不足の昨今、様々な病院が医官への引き抜きを行っており、多くのケースで役職を失うリスクが伴います。近年、医官のキャリア形成には大きな課題が残されており、専門性を高める努力が不可欠です。行政機関での医師は医官とは異なり、医務官や医系技官と呼ばれ、別の役割を果たしています。

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