医疾令

医疾令（いしつりょう）について

医疾令は、日本の律令制度の中で重要な役割を果たした法令の一つであり、特に医療や薬に関連する規定を中心に構成されています。この法令は、養老令の第24番目の篇目として位置付けられており、古代の日本における医療制度の成り立ちや発展に関する貴重な情報を提供しています。

医疾令の歴史的背景

医疾令は、大宝令の段階から存在していたことが確認されており、養老令においての編纂作業やその後の復元作業を通じて、医療に関する様々な規定が制定されました。特に、医師や女医の育成や採用、薬の管理、医療機関の運営に関する詳細が定められていましたが、現在ではその内容の多くが散逸してしまい、正確な全容は不明です。

そのため、江戸時代には塙保己一をはじめとする研究者によって医疾令の復元が試みられ、様々な文書からの逸文が収集され、現在に至るまでその存在が確認されています。また、唐の医疾令との関係性も注目されており、唐の医学が日本に与えた影響も大きいことがわかります。

養老令と医疾令の内容

養老令における医疾令は、『令集解』によると全27条から構成されていたと推測されています。そこで扱われている内容には、医生や薬園生の育成や採用、典薬寮や地方医師の職務が含まれており、これにより医療制度の基盤が築かれていきました。特に、日本独自の医療制度が整っていく過程で、唐の医療技術を反映した部分が多く見受けられるのが特徴です。

唐令との関連性

1999年に発見された北宋の天聖令には、唐の開元25年令が併記されており、医疾令や倉庫令の全文が含まれていることがわかりました。これにより、江戸時代以来の復元作業が正しい方向で行われていたことが実証される結果となりました。特に、医疾令における条文の内容や系列は、唐令と多くの点で一致しているため、当時の日本の医学が唐の影響を受けていたことが明らかになっています。

医療制度の変遷と影響

しかし、医疾令が成立した後の8世紀に入ると、薬部氏族や薬戸との関係が弱まっていき、新たに医療に関与する氏族が現れるようになりました。このことは、医療の専門性を持った家系が形成されるきっかけになり、平安時代中期になると官司請負制が確立し、和気氏や丹波氏といった氏族が医療の分野で権力を握ることになりました。

まとめ

医疾令は、日本の古代医療制度を理解する上で欠かせない史料であり、その内容や背景に関する研究は今なお進められています。医療における技術や知識の継承の重要性を理解するためにも、医疾令の存在は大変意義深いといえるでしょう。大宝令から養老令、そして現代に至るまで、医療の歴史を見つめ直すために、医疾令は引き続き注目されるべきテーマです。

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